『TENET テネット』感想・あらすじ徹底解説! ノーラン節炸裂!! 世界が驚愕した「順行VS逆行」の極上時間バトルを体感せよ!【ネタバレあり】

映画レビュー
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc

 

今回取り上げるのは、クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』

製作費2億2500万ドルを費やして作られた本作は、世界で4台しかない超高解像度の70㎜IMAXカメラで撮影された作品で、ノーラン節とも言える『複雑に構築された世界観』『斬新なアイディア』『観る者を圧倒する迫力』が極限まで達した、監督の集大成との呼び声も高いスパイアクションです。

しかも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で幾度となく公開が延期されても監督が劇場公開に強く拘ったことから、ハリウッドでは本作が映画興行復活の象徴』と位置付けられており、世界中の映画ファンたちが今や遅しと公開を待ち望んできた経緯があります。

そして、その期待通り、9月3日に公開された全米では公開から2週連続で週末興行収入No.1を獲得し、世界興行収入は早くも2億ドルを達成。9月18日に満を持して日本でも公開される運びとなりました。

僕も期待に胸を膨らませながら、公開初日に109シネマズ川崎IMAXレーザーで、3日目に109シネマズ二子玉川で鑑賞してきましたが、「順行時間VS逆行時間」という難解なギミック(仕掛け)で観客を混乱に陥れ、強烈な映画体験をこれでもかと強いてきました。

恐らく1度観ただけで全てを理解するのは困難だと思いますので、出来るだけ分かりやすくその謎を紐解いていきたいと思います(長文なので、核心部だけ読みたい方は目次から「ストーリー解説」に飛んでください)。

それではいってみましょ~♪

 

映画『TENET テネット』スペシャル予告 2020年9月18日(金)公開

『TENET テネット』公式サイトはこちら

 

あらすじ

  

満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。罪もない人々の大量虐殺を阻止するべく、特殊部隊が館内に突入する。
部隊に参加していた名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、仲間を救うため身代わりとなって捕えられ、毒薬を飲まされてしまう…しかし、その薬は何故か鎮痛剤にすり替えられていた。
昏睡状態から目覚めた名もなき男は、フェイと名乗る男から“あるミッション”を命じられる。それは、未来からやってきた敵と戦い、世界を救うというもの。未来では、“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され、人や物が過去へと移動できるようになっていた。
ミッションのキーワードは〈TENET(テネット)〉。
「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。
謎のキーワード、TENET(テネット)を使い、第三次世界大戦を防ぐのだ。突然、巨大な任務に巻き込まれた名もなき男。彼は任務を遂行する事が出来るのか?

                                   映画『TENET テネット』公式サイトより

 

スタッフ

 

監督・脚本クリストファー・ノーラン
製作総指揮トーマス・ヘイスリップ
製作エマ・トーマス/クリストファー・ノーラン
音楽ルドウィグ・ゴランソン
撮影ホイテ・ヴァン・ホイテマ
美術ネイサン・クロウリー
衣装ジェフリー・カーランド
編集ジェニファー・レイム
製作会社シンコピー・フィルムズ
配給ワーナー・ブラザース映画

 

キャスト

 

(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc

主人公/名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン
ある偽装テロ事件に特殊部隊として潜入したことから、第三次世界大戦を防ぐための謎のキーワード「TENET」を巡るミッションに巻き込まれる。

ニール(ロバート・パティンソン
名もなき男の任務遂行を手助けする優秀なエージェント。相棒として、世界各国を旅する。

キャット(エリザベス・デビッキ
セイターの妻で一児の母。イギリスの貴族階級の生まれ。美術品の鑑定士。セイターの秘密を知るものの、彼から離れられない秘密がある。

 

セイター(ケネス・ブラナー
ロシアの新興財閥。天然ガスで富を築いたとされているが裏の顔は武器商人。未来と現在を繋ぐ役割を持つ謎の悪人。

プリヤ(ディンプル・カパディア
“TENET(テネット)”を知る、秘密組織の一員。何者かの指示で動いている。

アイヴス(アーロン・テイラー=ジョンソン
プリヤが指揮する部隊のリーダー。名もなき男を導く。

マヒア(ヒメーシュ・パテル
名もなき男と、ニールと行動を手伝う、工作員。

バーバラ(クレマンス・ポエジー
科学者。逆行する弾丸の仕組みを教える。

クロスビー(マイケル・ケイン
名もなき男に、セイターの情報を教え援助をする。イギリス情報部とのパイプがある。

 

クリストファー・ノーランってどんな監督?

  

(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc

 

クリストファー・ノーランはイギリス・ロンドン生まれの映画監督・脚本家・プロデューサーで現在50歳。妻のエマ・トーマスは映画プロデューサーで、1997年に結婚して以降は二人三脚で映画製作に取り組んでいます(本作『TENET』でも製作を務めている)。

代表作は『メメント』、バットマンの『ダークナイト』シリーズ、『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』などなど。独特な世界観や情報量の多さ、圧倒的なビジュアル&洗練された音楽の使い方が作品の特徴として挙げられ、いまハリウッドで最も注目されていると言っても過言ではない、世界中に熱狂的なファンがいる映画作家です。

 

そして、そんな彼の理念を支えているのがIMAXカメラです。

デジタルカメラを嫌い、高解像度のフィルム撮影にこだわる彼は2009年の『ダークナイト』で初めて長編劇映画にIMAXカメラを活用した監督としても知られており、2012年の『ダークナイト ライジング』以降の作品すべてでIMAXカメラを駆使してきました(ちなみに、『ダークナイト』撮影当時、世界に4台しかなかった50万ドルぐらいするIMAXカメラをカーチェイスの撮影でぶっ壊したエピソードなんかもあります)。

IMAXについて詳しく知りたい方はこちらから。

また、ノーランは、最先端技術にもあまり興味を示さないことでも有名で(CGには否定的な考えを持っている)、本作でも、逆行シーンを実際に役者に演じさせて撮影したり、本物のジャンボジェット(大型旅客機ボーイング747)を購入してそれを爆破するというクレイジーな撮影を実行。CGでは作り出せないリアルで迫力のある画を莫大な製作費を使ってひたすら追求し続けました。

ですから、本作『TENET』がコロナ禍の影響で公開が何度も延期になろうが、彼は「自分の作品は絶対に映画館で観て欲しい」と、配信による公開を拒み続けたと言われています。昨今は、ディズニーの大作映画『ムーラン』ですら劇場公開をせずに配信しまう時代であり、そういう彼の姿勢から本作が『映画館の救世主』『映画興行復活の象徴』と言われる所以なわけです。

 

映画『TENET テネット』特別映像(名もなき男編)メイキング

 

そして、クリストファー・ノーラン監督は「いつか007が撮りたい!!」と公言するほど大のスパイ映画好きであることも知られています。

そのせいか本作の主役を演じたジョン・デイビッド・ワシントン『ブラック・クランズマン』スパイク・リー監督)でKKKに潜入する刑事を演じているし(実際に同作を観てキャスティングしたと発言している)、彼のお父さんであるデンゼル・ワシントントニー・スコット監督『デジャヴ』でATF捜査官を演じています(これもタイムトラベルものでしたね)。他にも本作にはシークエンス、台詞、キャスティングなどを通じてスパイ映画への愛が至る所に散りばめられているので、そう言ったところも見どころの一つとなっています。

 

感想・解説(ネタバレあり)

 

お待たせしました。それではいよいよ解説です。

 

まず初めに、映画『TENET テネット』は、主人公が人類滅亡を阻止するために悪と戦う物語であることを今一度思い出しておきましょう。敵は武器商人のセイターで、9個揃えると人類が滅亡するアイテム(アルゴリズム)の最後の1パーツを取り合う内容です。

例えば、映画『アベンジャーズ』でインフィニティストーンを奪い合ったのと同じで、「サノスの指パッチン」が本作では「セイターの死」になっただけ。セイターは余命僅かで、自らの死とともにアルゴリズムを起動させ、人類を道連れ(人類滅亡)にしようと計画しています

つまり、ギミック(仕掛け)が複雑な分、物語自体は物凄くシンプルで、主人公はセイターたちから『アルゴリズム』を奪取し、人類滅亡を阻止すれば勝ちというストーリーです。

 

しかし、そんな単純明快なストーリーですら吹っ飛んでしまうぐらい細部が難解なので、観ていて「こいつら何してるんだっけ?」と思った方も多くいると思います。なので、まず初めに『映画を理解するために覚えておきたいルール』を整理していきたいと思います。

  

映画を理解するために覚えておきたいルール

 

①時間を逆行できるルール(難易度★★☆☆☆)
本作『TENET』には、デパートの入り口にあるような回転ドアが出てきて、人間がそこを通ると時間を逆に進むことが出来ます。

これまで私たちが観てきたタイムリープものは、『あるA地点から過去のB地点にタイムスリップをして、そこから行動を開始する(つまりB地点から順行する)』ことが当たり前でしたが、本作では『前に進んでいた時間が、あるキッカケで後ろに進みだす』というルールが存在しています。つまり、10分前に戻りたいと思ったら、回転ドアに入ってこれまで過ごしてきた10分間を遡っていかなければならない訳です。

ちなみに、時間を逆行すると、酸素を吸い込んで二酸化炭素を吐き出すということも逆になってしまうので、未来から逆行してきている人たちは酸素マスクをつけているか、酸素が充満している部屋(黄色い半透明の幕で覆われたコンテナなど)の中にいます

 

 

②順行の人と逆行した人が共存できるルール(難易度★★★☆☆)
この映画の中では、時間を順行している人と、時間を逆行してきた人が同じ時間軸の中で共存できるというルールが存在します。つまり、それは同じ時間軸に2人の同じ人間が存在し得るということで、これにより『順行している主人公』『逆行してきた主人公』が鉢合わせになって戦うシーンや、順行逆行のカーチェイスなどが可能となりました。

と言うか、映画『TENET』は基本的に『普通の時間軸で生きてる人(順行)VS未来から戻って来た人(逆行)』を描いているので、ここで「どういうこと?」ってなるとちょっとキツイです。順行している人と逆行している人が同じ画面内に映り得るということは最低限覚えておきましょう。

 

 

逆行してきた人が再び順行出来るルール(難易度★★★★☆)
ここから先は結構難解です。まず、①で「時間を反転させられる回転ドア」の説明をしましたが、この映画の中に回転ドアが何個出て来たか覚えてるでしょうか? 正解は……

オスロの空港
タリンの倉庫
母艦マグネヴァイキング号
スタルスク12の地下

この4カ所です。そして、未来から逆行してきた人が再び別の回転ドアに入ると、また順行に戻ることが出来ます。

詳しい理由などは後述しますが、例えば、物語の中盤~終盤にかけて怪我を負ったキャットを助ける為に2度回転ドアに入ったり、『順行→逆行→順行したキャット』が『もともと順行していたキャット』と入れ替わってセイターを殺したりしていましたよね。そして、このルールによってクライマックスの挟み撃ち大作戦が成立する訳です。

 

 

④同じ世界に同じ人間が何人も存在するルール(難易度★★★★★)
これは②を更に複雑化したルールです。理解してなくても作品は楽しめるので、混乱しそうになったら読むのをやめてください。

タイトル通り、映画『TENET』では、同一時間に同一人物が複数人存在することの出来る世界です。例えば、短い時間ではありますが、序盤に出て来たオスロ空港シーンの直後では名もなき男5人同じ時間に存在していることになっています。

簡単に説明しますね。
空港でニールとともに贋作を探していた名もなき男を基準にして考えましょう。空港での贋作奪還ミッションを失敗した後、彼はキャットに「贋作は処分した」と嘘を付きセイターに接近します。では、その間に別の「名もなき男」は何をしていたか。
 

①空港で名もなき男と格闘した覆面男(逆行)
キャットを助けるため空港に向かっている

②空港でニールに顔を見られた覆面男(再順行)
キャットを回復させプリヤに会いに行く

マグネヴァイキング号で逆行する名もなき男
スタルスク12の挟み撃ち作戦に向かう

④任務終了後、平穏な日常を送る名もなき男
本編には登場しない

いかがでしょう。
確かに同じタイミングで5人の名もなき男が存在していることになりますよね。

ちなみに、同時世界(時間)にいる同一人物が接触すると消滅するという台詞もありましたが、空港で名もなき男が対峙しているので、このルールが正しいのかは分かりません(お互いが顔を認識しなければいいんでしょうか……)。

  

難解なストーリーを徹底解説!

 

ここから先は個人的な解釈も含みます。まだ理解出来てない部分もありますし、間違った解釈をしているかもしれません。
その場合はすぐに訂正するので、お手数ですがメールかTwitterのDMでご連絡いただけると助かります(自分で気付いた部分は適時修正/更新していきます)。

 

では、ここからストーリーを冒頭から追い掛けていきたいと思います。
ネタバレ全開なので、未見の方はご注意下さい。


まず、映画が始まる前に『WB(ワーナー・ブラザーズ)』のロゴが赤色で映し出されます。
どうしてなのかと言うと、劇中で時間の順行を示すのが赤色だから。「ここから物語が前に進んでいくぜ!」というノーランからの宣言みたいなもんですね。

 

 

 

Mission Ⅰ キエフ国立オペラ劇場
満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。突如現れた武装グループに観客もろとも占拠されてしまいます。そして、これを予期していたかのように出撃する特殊部隊。観客が眠らされた状態で撃ち合いが始まる中、CIAのエージェントである「主人公/名もなき男」は潜入していたスパイを救出し、クロークから「プルトニウム241」の回収を行いました。しかし、観客ごと劇場を爆破しようとする特殊部隊を発見し、名もなき男はこの事件自体が何者かに仕組まれたものであることに気付きます。しかも、「プルトニウム241」だと思っていた物が謎の物体……。混乱する気持ちを抑えつつ、なんとか時限爆弾を回収して観客の命を救った名もなき男でしたが、脱出寸前で敵に捕らえられ、壮絶な拷問を受けることになります。

 

ここに注目!

 
公式のあらすじにも劇中にも「テロ」という言葉が出てきますが、実際はTENET側とセイター側が「アルゴリズムのパーツ」を奪い合っています。勿論、この時点で名もなき男はその真相を知りません。

任務中、名もなき男に敵の銃口が向けられ絶体絶命のピンチに陥りますが、謎の人物によって助けられるシーンがあります。これは、リュックについていた紐の色(オレンジ)から「未来から逆行してきたニール」に助けられたことがクライマックスで判明します。

公式HPのあらすじを読むと、『名もなき男が毒薬を飲まされてしまう』と書いてありますが、実際は『口を割らないために自ら毒を飲んで死のうとする』が正しいです(このブログの『あらすじ』の項目は公式HPのままにしてあります)。仲間の為に自らの命を捨てられる男っていうのが秘密組織「TENET」的には大きなポイントでした。
 

 

 

MissionⅡ トロンヘイム海上
名もなき男が目を覚ますとそこはベッドの上でした。自決用の毒入りカプセルが何者かによってすり替えられ、ある組織に保護されていたのです。現れたスーツ姿の男によると、毒入りカプセルは名もなき男が任務に適任かどうかを図るためのテストだったと言います。その任務とは核戦争よりも深刻な第三次世界大戦から人類を守ること。半ば強制的に謎の組織に入れられた名もなき男「TENET」の目的を知る為に科学者のバーバーラのもとを訪れます。そこで、逆行する弾丸を見せられ、驚愕しつつも、その薬莢の成分からインド製であることを突き止めます。

 

ここに注目!

 
ここで初めて『TENET』という単語が出てきます。『TENET』を辞書で引いてみると「信条」「主義」「原則」という意味が出てきますが、本作では謎の組織のことを指します。監督は、1世紀の中ごろから存在していたと言われる『SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS』というラテン語の回文から本作のタイトル/人物名/施設名等を付けました。ちなみに、本作のクライマックスで「順行チームと逆行チームが敵を挟み撃ちする10分間の作戦」が実行されるのですが、『TENET』という単語が、前から読んでも後ろから読んでも『TEN』になる回文だから10分作戦だったと考えられます。

時間が逆行する原理に関しては「エントロピーの法則が~」と説明されますが、SFなので論理的に理解しようとしなくても大丈夫。考えずに感じて下さい。ただ、科学者のバーバラから順行の世界で逆行弾を撃たれると致命傷を負うことを説明されるので、それだけは覚えておきましょう。

名もなき男に与えられた最初のミッションは『逆行弾の出処を調べること』です。
 

 

 

MissionⅢ ムンバイ~ロンドン
逆行する弾丸の正体を突き止めるためにムンバイへと飛んだ名もなき男は、相棒となるニールと合流をします。そして、二人が大物武器商人・サンジェイ・シンのアジトに潜入すると、彼はただのお飾りで妻のプリヤが実際に商売をしていることが判明。更にプリヤから「逆行する銃弾の出処はロシアの武器商人・セイターである」と教えられます(売った時は普通の銃弾だったが、セイターが何らかの方法で逆行弾にしているらしい)。

ロンドンまでやって来た名もなき男は、まずイギリス諜報機関の連絡役・クロズビーと接触し、“ある絵画の贋作”を手に入れます。この贋作はアレポという画家が描いた2枚のうちの1枚で、もう1枚は美術鑑定士をしているセイターの妻・キャットが贋作だと知りながら故意にオークションに出品したようでした(キャットとアレポは親密な関係だった)。しかし、それを高額で競り落としたのが夫のセイターで、彼は浮気の代償にキャットを美術品詐欺で訴えると脅しているようです(いつでも刑務所送りに出来る。息子と離れ離れにしてやる)。そこでキャットのもとを訪れた名もなき男は、贋作を盗み出すことを条件にセイターへの仲介を約束させます

 

ここに注目!


プリヤは“TENET”のメンバー(黒幕)で、名もなき男に指示をするキャラクターです(ただし、純粋な正義側の人間って訳でもありません)。

クロズビーの役割は、名もなき男に贋作を渡すこと、セイター夫妻の内情を教えること、オペラ劇場のテロ事件と同じ日に起きたスタルスク12の爆発を教えることです。

このパートから『第三次世界大戦を防ぐ』というメインプロットと並行して『キャットをセイターから救う』というサブプロットが新たに追加されます。セイターキャットは「支配する者」と「される者」の関係であり、そこから自由になることがキャットの目指すゴールです。

ベトナム旅行の回想シーンで、キャットはヨットから海に飛び込む女性を目撃しますが、これは未来から逆行し、再び順行に戻ったキャット自身であることがのちに判明します。ちなみに、ベトナム旅行はオペラ劇場のテロ、スタルスク12の爆発と同じ日の出来事です。

名もなき男に与えられた次のミッションは『贋作奪還大作戦』です。
 

 

 

MissionⅣ オスロ空港(贋作奪還大作戦)
名もなき男は、キャットの情報からオスロ空港にあるフリーポートの保管庫が贋作の隠し場所と推測し、貨物機を保管庫に衝突させ、その混乱に乗じて内部に突入する作戦を立てます。しかし、計画を進めていくと保管庫の内部で回転ドア状の奇妙な装置を発見し、両方のドアから二人の黒ずくめの男が出現。名もなき男は謎の男と格闘しますが、逆再生のような奇妙な動きに翻弄され、すんでのところで取り逃してしまいます。そして、名もなき男ニールは救助隊が駆け付けた時に消火用のハロゲンガスで気絶をしたフリをし、被害者として空港を後にします。

 

ここに注目!

 
貨物機を追突させたのは空港のシステムを停止させるためです。前述した通り、オスロ空港に突っ込ませた旅客機は本物を購入し、実際に爆破して撮影しています。

このパートで初めて「時空を逆行することのできる(物体のエントロピーを逆行させる)回転ドア」が登場しますが、扉から現れたのは、2人とも名もなき男です。詳しくはMissionⅦのパートで解説します。

保管庫に突入したのは贋作を取り戻す目的もありましたが、時間を逆行する武器の手がかりを探していたのもあります。そして、逆行する男の存在を目の当たりにした名もなき男は、セイターが第三次世界大戦の鍵を握る人物であることを確信します。

このシークエンスは謎の男たちが現れたことによりミッション失敗に終わりますが、名もなき男キャットに贋作は処分したと嘘をつき、セイターとの仲介を依頼する流れに繋がります。

名もなき男に与えられた次のミッションは『セイターと接触し、目的を探ること』です。
 

 

 

MissionⅤ アマルフィ海岸(セイターに接近せよ)
名もなき男は、キャットの手引きによりセイターのいる夕食会へと潜り込みます。初めは名もなき男のことを(妻の不倫相手だと勘ぐり)殺害しようとしていたセイターでしたが、名もなき男が『キエフ国立オペラ劇場での一件について知っている』ことを示唆すると、態度を一変。翌朝、セーリングに誘ってきます。しかし、セーリング中にキャットセイターを殺害しようと命綱を切断し、セイターはそのまま海へと放り出されてしまいます。しかし、そんな彼を救ったのは名もなき男でした。命の恩人となった名もなき男は、セイターに「警察の手に渡り、エストニア共和国の首都・タリンに移送されるキエフのプルトニウムの強奪するから奥さんを自由にしてあげて欲しい」と提案します。

 

ここに注目!

 
贋作は事前にセイターによって保管庫から移動させられていたことが分かります。

大型ヨットの中で名もなき男セイターが時間を逆行する武器を運んでいるところを目撃します。これにより本作の最大の敵がセイターであることが揺るがないものとなります。

名もなき男の次のミッションは『装甲車からプルトニウムを強奪すること』です。
 

 

 

MissionⅥ タリン(プルトニウム強奪大作戦)
名もなき男ニールたちがプルトニウムの奪還作戦を実行します。プルトニウムはセキュリティ会社の装甲車によって倉庫に運ばれる最中。そこで名もなき男たちはチームに分かれ、それぞれの車で高速道路を走行中の装甲車を囲み込み、見事プルトニウムの奪還に成功します。しかし、ケースを開けてみると、入っていたのはオペラ劇場で目撃した謎の物体……。困惑する名もなき男でしたが、突然そこに一台の逆行車が猛スピードで突進してきます。その車中にはセイターと彼に銃を突き付けられたキャットが乗っていて、彼女を殺さない代わりにスーツケースを渡せと脅してきたのです。仕方なくケースをセイターに渡す名もなき男でしたが、咄嗟の機転で中身だけは渡しませんでした。

その後、キャットとともにセイターに捕まってしまった名もなき男が港の倉庫へと連れて行かれると、そこにはエントロピーを逆行させることの出来る回転ドアがありました。そして、部屋の中で名もなき男は、反対の青色の部屋(時間が逆行する部屋)でキャットセイターに撃たれる場面を目撃します。キャットが殺されると思った名もなき男は、プルトニウム(アルゴリズム)はBMWの中にあると白状。すると、その時、ニールを含めたTENETの軍隊が名もなき男を救出するために突入してきます。

 

ここに注目!

 
車に乗っている時に、名もなき男がニールにセイターたちの無線を盗聴しろと言いますが、言葉を理解出来なくて失敗に終わるシーンがあります。それは、順行している人間は、逆行している人間の言葉を理解出来ないというルールが存在しているからです(逆もまた然り)。それ故に、セイターが「ケースをよこせ」とキャットに銃口を突き付けるシーンでは言葉を発せず、「3,2,1……」と指でジェスチャーをしています。

 

カーチェイスでポイントとなる車は4台。
名もなき男が乗る順行車(BMW)と折り返してきた逆行車(SAAB)セイターたちが乗る順行車(Benz)逆行車(Audi)です。

まず、装甲車からプルトニウムを強奪した名もなき男ニールBMWを走らせていると、逆行するAudiに追跡されます。振り切ろうとBMWを走らせる名もなき男たちでしたが、進行方向に横転したSAABを発見。しかし、「ぶつかる!」と思った瞬間に突然SAABが立ち上がり、逆行で走り出しました。そして、BMWに並走した逆行Audiの窓が開くと、酸素マスクをつけた逆行セイター順行キャットに銃を突き付けており、名もなき男キャットを救うために仕方なくケースをセイターに投げ渡します(しかし、その時、中身を逆行のSAABに投げ入れています)。

ケースをゲットしたセイターは敵の順行Benzで逃走。逆行のAudiに残された後部座席にいるキャットは身動きが取れず、車を操作できません。しかし、車に衝突する寸前のところでBMWからAudiに飛び移った名もなき男が急ブレーキをかけて事なきを得ます(その後、捕まります)。

 

倉庫のシーンでは、監督の(良い意味で)嫌な部分が炸裂しています。
何故なら、編集によって時間軸をいじくり、実際は未来で起きている出来事を、それよりも前に起きた出来事のカットに挟み込んでいたり、セイターキャットが2人いるようにわざと順行からの視点逆行からの視点を編集で切り替えているからです。ただ、前述した『順行の人と逆行した人が共存できるルール』を頭に入れながらセイターの動きを注意深く見れば理解出来るので、2回目を観る方はそのあたりに注目して下さい。
※ここはカットの意味が分からなくても、流れが掴めればOKです。

名もなき男の次のミッションは『セイターからプルトニウムを奪還すること』です。
 

 

 

 

MissionⅦ タリン(プルトニウム奪還大作戦)
TENET軍の突入により、セイターは逆行の部屋に移動して逃亡を図ります。そして、名もなき男もプルトニウム(アルゴリズム)を奪還するために自ら逆行の世界へと足を踏み入れることを決意。空気の流れまでが逆行する世界に戸惑いながらも、名もなき男は先ほどのハイウェイに戻っていきます。そして、何とかしてセイターに追いつきますが、運転していたSAABがまさかの大クラッシュ。車からの脱出に手間取っている間にセイターによって漏れたガソリンに火を点けられてしまいます(熱の流れが逆なので凍っていく)。

 

ここに注目!

 
ニールがTENET軍を連れて来たことで、ニールがTENETの一員(もしくは関係者)であることがハッキリします。

名もなき男は自分たちの全ての行動がセイターたちに筒抜けだったことを不審がり、TENET内に裏切り者がいるのではないかとニールに詰め寄りますが、TENETの軍隊のリーダー・アイブス「時間の挟み撃ちにされた」と言います。セイターは一度全てを経験た後で逆行し、再びその出来事の最初の時点に戻っていたので、何が起こるかを全て知っていたのです。

ここで観客は、先ほどハイウェイでクラッシュしていたSAABが逆行してきた名もなき男が運転していた車であることを知ることになります。

このシークエンスでセイターはアルゴリズム9個を揃えており、その足で過去のベトナムまで時間を遡ります。

名もなき男の次のミッションは『キャットの命を救うこと』です。
 

 

 

Mission Ⅷ オスロ(キャットの命を救え!)
TENET軍に救出され、何とか低体温症から復活する名もなき男。そして、重傷を負ったキャットを救うために、名もなき男、ニール、キャットは時間を遡り、再度順行コースに戻ることを計画します。向かった先はオスロ空港にある回転ドア。贋作奪還作戦の際に旅客機が保管庫に衝突した瞬間を狙って潜入しようと考えたのです。しかし、空港に着いた名もなき男は旅客機の爆風に吹き飛ばされて建物の中に放り込まれてしまいます。そして、そこにいたのは当時、贋作を探していた名もなき男ニールでした。逆行してきた名もなき男は順行の名もなき男と格闘の末、回転ドアに駆け込んで再び順行の世界に戻ります。また、名もなき男(逆行)名もなき男(順行)ニール(順行)の気を引いているうちにニールも見事キャットを回転ドアに入れて、時間を順行に戻します。

 

ここに注目!

 
【アルゴリズムとは】
未来の科学者が発明した9つの部品からなる物体で、起動すると万物の時間が逆行し、人類が滅亡してしまいます(呼吸困難が原因か?)。その恐ろしさに気付いた未来の科学者は、アルゴリズムが悪用されないように分解した上で時間の逆行を使い過去に封印、その後自殺してしまいます。
しかし、未来人たちが暮らす地球は環境問題で破滅寸前。そこで過去の人類が死んでも自分たちは生き残るかもしれないという考えのもと(劇中で語られる『祖父殺しのパラドクス』を否定)、未来人はセイターを操ってアルゴリズムを起動させようとしています。

セイターが未来と過去の仲介人になったのは、幼い頃からスタルスク12でプルトニウムを探す仕事を行っていて、未来人からのメッセージを受け取ったからです。

 

【負傷したキャットをオスロ空港に連れていった理由】
まず、順行の世界で逆行弾に撃たれると致命傷になるという設定があります。なので、逆行弾を撃ち込まれたキャットがすぐに順行の世界に戻ることは出来ず、逆行の世界で回復する必要がありました(逆行の世界では普通に撃たれたのと同じ状態)。そこで、名もなき男たちは逆行の世界でキャットを治療しながら、数日間待ち、回復してきたところで再び回転ドアに入り順行に戻ることを考えます(だから撃たれたという事実は変わらず、傷口は残ったまま)。回転ドアに入る場所がオスロ空港だった理由は、空港での出来事は1度経験していて何が起こるか知っているから。タリンの倉庫じゃ駄目だった理由は、そこがセイターのアジトで数日間滞在するのが難しいからだと推測されます。

 

「ニール(順行)」側に出てきた謎の男は「名もなき男(順行)」との戦いの後に「再順行してきた名もなき男」です。

「名もなき男(順行)」VS「名もなき男(逆行)」のシーンで銃を使うアクションがありますが、よく見ると銃口を相手に向けてません。「名もなき男(逆行)」は弾を無くすために発砲しています。
 

 

 

MissionⅨ ムンバイ
再び順行の世界に戻った名もなき男はその足でプリヤのもとを訪れます。そこで、プリヤは「アルゴリズムのことも、名もなき男が奪還に失敗することを知っていた」と言います。そして、名もなき男にTENET軍が最後の決戦に備えて待機しているトロンハイムに向かうよう指示を出します。

 

ここに注目!

 
プリヤの真の狙いはセイターにアルゴリズム9個を集めさせ、全てを回収することでした。
 

 

 

MissionⅩ マグネヴァイキング号
アルゴリズムの奪還作戦を練る名もなき男たち。しかし、アルゴリズムを奪う前にセイターを殺すことは出来ません。何故なら、セイターの腕には心拍数(脈拍数)を図る機械が付いており、彼が死ぬとアルゴリズムが発動するようになっているからです。しかも、キャットの口から「セイターは末期癌でいずれ自ら死ぬつもりであること」を告げられ、セイターが死を選ぶとすれば彼が最後に幸せを感じたベトナム旅行であるのではないかと考えます。

アルゴリズムが隠されているのは、かつてセイターが住んでいたスタルスク12と呼ばれる旧ソ連の閉鎖都市。そして、名もなき男はロンドンで諜報員のクロズビーからキエフ国立オペラ劇場のテロと同じ日にスタルスク12で爆発があったと聞いていたことを思い出します(その爆発によってアルゴリズムが地下に埋もれてしまった)。そこでTENET軍は爆発が起きた日まで遡って時間の挟み撃ちを行うことにします。

 

ここに注目!

 
マグネヴァイキング号の中に「時空を逆行することのできる(物体のエントロピーを逆行させる)回転ドア」があります(これまでの回転ドアと違い、大きなスロットマシンのような形をしていました)。

時間の挟み撃ちとは、ある地点まで遡ってそこから再び順行してくるAチームと、逆行していくBチームで敵を挟み込む作戦です。

 

 

MissionⅪ スタルスク12
スタルスク12で爆発を起点に順行逆行で10分間の作戦が行われます(順行軍には名もなき男、逆行軍にはニールがいます)。逆行するブルー部隊は爆心地へ降下、敵の排除と情報収集順行するレッド部隊はブルーの撤収地域の制圧とアルゴリズムの確保を目指します

しかし、飛び交う銃弾を縫いながらアルゴリズムの隠された洞窟入り口に突入した名もなき男と軍のリーダー・アイブスでしたが、爆弾トラップによって出口を塞がれてしまい、中心部目前で鍵のかかった鉄格子に行く手を阻まれてしまいます。すると、鉄格子の向こうで倒れていた死体(リュックにオレンジ色の紐)が突然蘇生し、名もなき男に向かって放たれた銃弾から庇うように被弾。そのまま鉄格子の鍵を開けてどこかに行ってしまいます。

格闘の末、なんとかアルゴリズムの奪還に成功した名もなき男アイブスでしたが、出口を塞がれて脱出することが出来ません。すると、どこからともなくロープが投げ込まれ、10:00の爆発と同時に脱出することが出来ました。ニールが助けに来てくれたのです(時同じくして、ベトナムに来た再順行キャットは、キャットと入れ替わってセイターを射殺します)。

アルゴリズムの回収に成功して安堵の表情を見せる名もなき男、ニール、アイブス。しかし、名もなき男ニールのリュックにオレンジ色の紐が付いていることに気付きます。そう、先ほど、鉄格子の前で自分のことを庇って死んだのはニールだったのです。

そして、ニールは自分が「名もなき男」の依頼によって未来からはるばる遡って来たことを告げ、自分の死が待つ過去へと遡っていくのでした。

 

ここに注目!

 
作戦は0~10分までの10分間を過去と未来から挟み撃ちにします。つまり、順行軍が任務をスタートさせた瞬間は、逆行軍が任務を完了した瞬間でもあります。

TENET軍が「爆破を阻止しようとしてる」と思う方が多いようですが、それは違います。
何故なら、この世界では、一度起きたことは覆らないからです。名もなき男たちはアルゴリズムが爆心地に埋まってしまう前に奪還することを目指しています。

最後の決戦では順行軍が赤色逆行軍が青色と目印はあるものの非常に見分けづらいです。ポイントは音楽。逆行軍が画面に映るカットでは音楽も逆再生っぽい不気味な感じになるので、耳で判断すると分かりやすいと思います。

スタルスク12にも「時空を逆行することのできる(物体のエントロピーを逆行させる)回転ドア」がありました。

最後の決戦で重要なのはニールの動きです。
まず、逆行チームの一員として情報収集に当たっていたニール(このまま逆行し続けた先には死が待っている)が洞窟に仕掛けられた爆破トラップに気付き、名もなき男を助ける為に回転ドアに入って順行になります。そして、ニール名もなき男アイブスに敵の罠を伝えようと車で追い掛けクラクションを鳴らしますが、残念ながら2人を止めることは出来ません(その後、2人はアルゴリズムを奪還)。そこで、ニールは爆心地へ向かい、地下に閉じ込められた名もなき男たちにロープを投げ入れ、爆発と同時に2人を引き上げます。
(~中略~)
アルゴリズムを回収し、ミッション成功に胸を撫で下ろす名もなき男たちでしたが、ニールにはまだ重要な仕事がありました。それは、再び逆行し、鉄格子の鍵を開けること、そして、名もなき男に放たれた銃弾の盾になることです(これをしないとミッションが達成できません)。つまり、ニールは自分が死ぬことを分かりながら、ラストで再び逆行していくのです。

セイターを殺害した後、キャットはヨットから海に飛び込みます。物語序盤で海に飛び込んでいた女性はキャット自身だったということが分かります。

最後にニールが言った「これが美しい友情の終わり」という台詞は、映画『カサブランカ』のオマージュだと思われます。

ニールの台詞により「名もなき男」こそがTENETの黒幕であり、ニールを過去に遡らせた張本人であることが分かります。

 

 

 

Epilogue(エピローグ)
プリヤは全てを知り過ぎたキャットを殺害しようとロンドンにいました。しかし、それを食い止めたのは名もなき男でした。名もなき男プリヤを射殺し、自分がこの世界の主人公であることを自覚して物語が終わります。


エンドロールが終わると時間の逆行を示す青色のWBロゴが出てきます。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。

他にも、『キャットの息子マックス=ニール説』というのもかなり信憑性のある話なので、掘り下げて検証してみたかったんですが、収拾が付かなくなりそうなので止めました(笑)

 

ただ、本作は明らかに分かる破綻/矛盾点もあって、そのあたりをどう捉えるかで作品の評価が変わって来るような気もしています(例えば、逆行した人は酸素ボンベを必要としてますが、人間の体内で決まった方向に流れているのって空気だけじゃないですよね。長い時間逆行するとしたら食事とかはどうするんでしょう。血流とか消化が逆行したらマズいことになると思うのですが……)。

それでも今までにない映画体験が出来るのは間違いありませんし、映像の迫力・音響の素晴らしさを体感するだけでも映画館に行く価値は大いにあると思います。

観る度に新たな発見もあるはずですし、是非1度と言わず2度、3度と劇場に行っていただきたいと思います。苦手な人もいるかもしれませんが、個人的には今年No,1級でした。

ノーラン、ありがとう!!!!

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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