映画『星の子』感想 新興宗教の2世を芦田愛菜が熱演! 信じるか信じないかはアナタ次第!【ネタバレあり】

映画レビュー
(C)「星の子」製作委員会

 

今回取り上げるのは、芦田愛菜主演の『星の子』

芦田愛菜と言えば、ドラマ『Mother』(日本テレビ系列)への出演で一躍その名を全国に知らしめ、ドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系列)の主題歌『マル・マル・モリ・モリ!』で鈴木福とNHK紅白歌合戦にも出場した(元)天才子役

これまでもバラエティ番組や声優等で活躍していましたが、高校1年生になったタイミングで6年ぶりに実写映画の主演として帰ってきました。

原作は『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞した今村夏子による同名小説で、監督・脚本は『まほろ駅前多田便利軒』『日日是好日』『タロウのバカ』大森立嗣

ストーリーは、両親が新興宗教に傾倒していく家庭を娘の視点から描いた特殊なホームドラマで、共演者に永瀬正敏、原田知世、岡田将生、大友康平、高良健吾、黒木華ら豪華俳優陣が脇を固めています。

大森監督作品はこのブログでも長澤まさみ主演の『MOTHER マザー』を扱っていて、その際は酷評してしまったんですが、本作はストーリーも面白そうだし、何よりも芦田愛菜がどのような演技を見せてくれるのかが楽しみなところ。

果たして、天才子役はどのような進化を見せてくれるのか……。

それではいってみましょー♪

 

芦田愛菜『星の子』予告編

 

映画『星の子』の公式HPはこちら

 

あらすじ

 

 
大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろは、一目惚れした新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きるー。

                                          映画『星の子』公式HPより

 

スタッフ

 

監督・脚本大森立嗣
原作今村夏子『星の子』
(朝日文庫 / 朝日新聞出版刊)
製作吉村知己 金井隆治 近藤貴彦
音楽世武裕子
撮影槇憲治
編集早野亮
制作会社ヨアケ
ハーベストフィルム
製作会社「星の子」製作委員会
配給東京テアトル  ヨアケ

 

キャスト

 

林ちひろ  芦田愛菜  
南先生岡田将生
  雄三おじさん  大友康平
海路さん高良健吾
昇子さん黒木華
まーちゃん蒔田彩珠
なべちゃん新音
ちひろの父永瀬正敏
ちひろの母原田知世

 

感想(ネタバレあり)

 

総評

 
「信じるとはなにか?」を新興宗教を通して描いた家族映画。
家庭内と外の世界の狭間で葛藤する芦田愛菜の演技がとにかく素晴らしく、永瀬正敏、原田知世、黒木華を筆頭に他のキャスト陣もハマり役が多かった。

ただ、監督の前作『MOTHER マザー』と状況が似ているので、「親の呪縛」系が苦手な人は観ていてしんどいかも。宗教という日本ではタブー視されがちな題材を映画にしたことは凄く意味のあることだし、キャストの演技だけでも一見の価値はあるが、ダメな部分も結構散見されたので、改めて自分は大森監督と相性が悪いと感じた。
 

 

……はい。という訳でレビューを始めたいと思います。

 

まずは、本作の主役・芦田愛菜について。

今更多くを語る必要はないと思いますが、母親の勧めで3歳の頃に芸能界デビューをした芦田愛菜は、5歳の時に『Mother』(日本テレビ系列)のオーディションを勝ち取り、「実母から虐待される少女」を熱演したことで一躍その名が全国に知れ渡っていきました。

その後も、勢いは留まらず、映画『告白』やドラマ『マルモのおきて』、大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』、ハリウッド作品『パシフィック・リム』など話題作に立て続けに出演し、2019年11月9日には、皇居前広場で開催された「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」に出席し、祝賀メッセージを述べるほどの存在になっていきます。

 

彼女に対する世間のイメージは、天才子役、大人びたコメントをする、しっかり者、成績優秀……などなど、ポジティブなものばかり。

坂上忍安達祐実神木隆之介など子役出身で現在でも活躍している俳優は数多くいますが、その人たちと比べても芦田愛菜の特異性は頭一つ抜けており、どちらかというと卓球の福原愛やフィギュアの浅田真央のように「その成長を国民から見守られている」稀有な俳優だと思います。

そして、そんな彼女が6年ぶりの実写主演。
宗教を真正面から扱った邦画も珍しいので、さっそく鑑賞してきました。

 

芦田愛菜はやっぱり天才だった

 

本作は、宗教を信仰する家庭で育った娘(林ちひろ)の葛藤を描いた物語です。

 

芦田愛菜演じる15歳の林ちひろは、イケメンと絵を描くことが好きな一見すると何処にでもいるような中学3年生ですが、新興宗教の2世信者という側面があります。

しかも、両親が新興宗教に傾倒していくキッカケとなったのは、未熟児で生まれ、病弱だったちひろが“特別な生命力が宿った”『金星のめぐみ』という水に救われたから。

『金星のめぐみ』は、傍から見れば新興宗教が作っている怪しい飲料水でしかないのですが、育児に不安や悩みを抱いていたちひろの両親からしてみれば、藁にも縋る思いで手にした水がちひろを治すという奇跡を誘発したことにより、信仰の対象となってしまいます。

 

本作は、時間経過とともに確実に貧しくなっていく林家の金銭状況だったり、水を浸したタオルを頭に乗せる理解不能な儀式や、信者同士の横の繋がりを描くことで、私たち観客がカルト教団等に対して感じている宗教の『怖さ』『胡散臭さ』をこれでもかと提示してくるのですが、それでもちひろの両親を強く責められないのはちゃんと愛情があるからです。

両親はちひろを愛し、ちひろもまたそんな両親のことを信頼している……つまり、宗教を除けば林家は幸せな家庭なわけで、因果関係はさておき、ちひろの両親が宗教によって救われたという事実もあります。

途中、雄三おじさんからの連絡でちひろが法事に行くシーンが出てきますが、参列者たちは当たり前のように喪服を着ていて、目の前のお坊さんはお経を読んでいます。それは、私たちが普段行っているのも立派な宗教上の行為であることを示していて、監督は宗教を題材にしながらも、もっと普遍的なマイノリティへの偏見を描いていることが分かります。

 

 

(C)「星の子」製作委員会

 

そして、本作最大の見どころは何と言っても芦田愛菜の演技でしょう。

本作の芦田愛菜は、信頼してきた両親や当たり前のように接してきた宗教(価値観)が周囲との乖離を生み、その狭間で「正しいと思ってきたこと」への疑念が生じる女の子を完璧に演じ切っています。

特に、熱を出して保健室に行った際の「私、この水飲むと風邪ひかないんです。……でも、やっぱり風邪ですか」の台詞と、教室で南先生に叱責された後の一連の演技は、キャリアの浅い10代の役者では絶対に出来ない表現をしており、天才子役が天才女優に昇華した瞬間を目撃したような気になりました。

6年ぶりの実写映画が宗教を扱った作品というのも女優としての矜持を感じましたし、彼女がこれからの日本映画に欠かせない存在になっていくことは間違いないと思います。

 

ポイントとなるエピソードとキャラクター

 

この映画は、林家の宗教観に疑問を投げかけてくる人たちが立て続けに登場することで、ちひろに迷いが生じていくストーリーです。なので、今回はちひろの心に影響を及ぼした3つのエピソードと人物に焦点を当てながら解説をしていきたいと思います。

 

(C)「星の子」製作委員会

 

ちひろの姉・まーちゃんの家出【4年前】
僕が本作の設定で上手いと感じた1つは、生まれた時から宗教が当たり前のようにあったちひろと、物心がついてから(両親の)信仰が始まったまーちゃんを上手く対比しているところでした。

具体的な描写はありませんでしたが、ちひろは幼い頃から両親に連れられて集会等に参加している女の子。一方、まーちゃんは集会参加の有無は分かりませんが、確実に『洗脳』はされておらず、雄三おじさんと共謀して両親を改心させようと裏で動いたり、ちひろと(宗教上禁止されている)インスタントコーヒーをキッチンで隠れて飲んだりしています。

両親の信仰に耐えられなくなったまーちゃんは、ちひろが小学5年生の時に「もう帰りません」とメモを残して家を飛び出してしまうのですが、それでも最後まで姉妹仲は良好で、そういった関係性がちひろに「宗教(両親)への疑念」を植えつけたと言っても良いと思います。

また、本作では劇中にアニメーションが挟まれるシーンがあり、そこで語られた『全部病気になった私のせい? ねぇ、まーちゃんったら』という台詞から、ちひろは両親が宗教にハマってしまったこと、そして、それが理由でまーちゃんが家を出て行ってしまったことに対して責任も感じていることが分かります。

 

 

②雄三おじさんの水入れ替え事件【5年前】
雄三おじさんはちひろの母親の兄で、林家に対して新興宗教から足を洗うよう説得する役柄です。例えば、まーちゃんの協力を得て自宅にある『金星のめぐみ』を全て水道水と入れ替え、それでも気付かないちひろの両親に効果がないことを迫ったり、ちひろを自宅から高校に通わせようと(林家から引き離そうと)働きかけてきます。

雄三おじさんは、親族が宗教に取り込まれていく様を目の当たりにした唯一のキャラクターで、観客に一番近い存在です。最近は歌以上に俳優業が目立つ大友康平ですが、オファーが殺到する理由が分かるほどの好演だったと思います。

 

 

③南先生の目撃【現在】
岡田将生演じる南先生は、ちひろが通う中学校に赴任してきた新任教師でテニス部顧問。小学生の頃からエドワード・ファーロング『ターミネーター2』のジョン・コナー)の顔に憧れていたちひろは、講堂で新任挨拶をするイケメンの南先生を見て恋心を抱くようになります。しかし、この南先生は思いやりのない……もっと言うと、かなり性格に難アリな設定で、教師とは思えぬ過激な言葉で2回ほど林家の宗教観を全否定してきます。

 

(C)「星の子」製作委員会

 

それまでの言動から、ちひろ自身も「自分の家と世間は違う」と認識していたと分かりますが、「不審者がいる」「完全に狂ってる」「学校は宗教の勧誘に来るところじゃない!」と南先生から強烈な嫌悪感を示されたことにより、ちひろは『想像していた以上に林家が世間から距離を置かれる存在』であることに気付きます。

ちなみに、ちひろがファーロングや南先生の「外見」に惚れるという描写は、人間の「内面・アイデンティティ」を重んじる信仰と相反する行為ですが、これは宗教とちひろの距離感を表すための設定だと思います。

ラストの解釈

 

本作はまず現在と過去を交互に見せながら、ちひろの視点で林家の信仰や学校での日常生活が描かれ、南先生の叱責をキッカケに宗教施設「星々の郷」での大規模集会エピソードに移行していきます(ちなみに「星々の郷」は法政大学多摩キャンパスがロケ地)。

 

そこで、ちひろは両親と別行動になりはぐれてしまうのですが、廊下ですれ違った黒木華演じる教団の幹部・昇子さんに「迷ってるのね。あなたがここにいるのは、自分の意志とは関係ないのよ」と言われます。

当然、昇子は『教団が崇高している神(宇宙?)の導きによってここに居る』という意味で言ってるのですが、観客はちひろが自発的に信仰しているのではなく、両親の意思でここに居る』と捉えることもでき、「今後、ちひろは違う道を選ぶかもしれない」と想像できる余白を残していました。

 

そして、ラストの丘のシーン。
両親と再会したちひろは、三人で星を観に行くことになります。

そこでまず父親が流れ星を見て、
次に父親と母親が流れ星を見て、
最後にちひろ1人が流れ星を見たと言い、
3人で星空を見上げて終わりを迎えます。

僕はこれを観て、「ちひろは両親と別の物を見てる。つまり、将来的に宗教とは距離を取るんだろう」と思ったのですが、鑑賞後に本作の脚本を読んでみると、最後から2番目のト書きに『繋がった3人を祝福するかのような満天の星空』とあったので、ただ「色々あるけど幸せな家族」という表現に留めているのかもしれません(エンディングに関しては、監督もインタビューで「僕にもはっきりとした答えはないです」と答えている)。

それでも、「まーちゃんに子どもが産まれたって」「嬉しいね」という台詞や、「瀬乃高校は遠いな」と言う表情を観る限り、両親が娘たちに本来なら背負う必要のないもの(宗教)を背負わせてしまっている負い目は感じました

間違いないのは、ちひろには両親からの愛情が注がれていること。
そして、その愛情をちひろも受け止めていること。

確かに曖昧な終わり方をしているので「意味が分からなかった」「消化不良」と低評価をする人もいるかもしれませんが、これはこれで無難な着地だったんじゃないかと思います。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。

監督の前作『MOTHER マザー』を酷評してしまったので、今回は褒めポイントを中心に書きましたが、それでもやっぱり駄目な部分はあって、「良い作品だけどやっぱり大森監督とは相性が悪かった」というのが率直な感想となります。

 

例えば、岡田将生演じる南先生の描き方。
南先生は、ちひろの両親を目撃して「二匹いる」「不審者がいる」「完全に狂ってる」と言ったり、ホームルームで生徒たちが見守る中、ちひろのパーソナルな部分を執拗に攻撃したりと、明らかにリアリティラインを無視した演出がされています。これは『MOTHER マザー』でも感じましたが、大森監督って悪役を描くのが下手で、何処かデフォルメしたようなキャラクターになってしまうような気がしています。本作は特に「宗教」という得体のしれない団体を描いた作品なので、リアルな現実パートでは「そんな奴いないっしょ」とは思わせないで欲しかったです。

  

 

 

そして、もう1点。これは、映画のテーマとも大きく関係するところですが、僕にはどう考えても本作に出てくる宗教が「悪の組織」にしか見えませんでした

勿論、監督も『海路さんや昇子さんによる監禁疑惑』など裏側に潜むダークな部分を意図的に匂わせていることは理解しています。でも、それ以前に拝金主義なのは明白だし(林家がどんどん貧しくなっていく)、水を被れば病気にならないとか信じさせてる時点で、確実に脱退を勧めなければならないヤバい部類の宗教です。

あの感じだと、両親は娘たちに予防接種などを受けさせてない可能性もあるし、大きな病気をしても病院に行くことを拒否しそうだし、あの世界でコロナが流行しても「マスクも三密もソーシャルディスタンスも不要!」と言い出すはず。

本作を成立させるには「確かにヤバい宗教っぽいけど信仰の自由があるし、本人たちが幸せなら仕方ない」と観客に思って貰う必要があるのですが、確実にちひろが不幸になる(と想定できる)宗教にしてしまうと、ちひろの両親を全否定せざるを得なくなり、「家族の絆」や「信じるとはなにか?」という映画のテーマが根本からずれてしまうのではないでしょうか。

本作は信仰自体を貶める目的で作られてはいないと思いますし、マイノリティの視線で描いていたはずの作品が、マジョリティによるマイノリティ叩きに一層拍車を掛けてしまうのは意味がないので、もう少し宗教描写には慎重になるべきだったと思います。

 

 

……と、良い点も悪い点も色々と言ってきましたが、芦田愛菜の演技力は年齢を重ねても一切衰えることなく、むしろ円熟味を増しているようにさえ思いましたし、黒木華高良健吾の明らかにヤバい宗教家の演技も素晴らしいと思いました。

内容が内容なだけに賛否は分かれると思いますが、芦田愛菜ちゃん……いや、芦田愛菜さんの実力を思う存分楽しめますので、興味のある方は是非劇場に足を運んでください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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