映画『浅田家!』感想 家族写真をテーマにした感動物語! 二宮和也ら実力派キャストたちの演技合戦が静かにアツい!【ネタバレあり】

映画レビュー
(C)「浅田家!」製作委員会

 

本日取り上げるのは、嵐の二宮和也主演『浅田家!』

本作は、写真集『浅田家』で写真界の芥川賞と呼ばれる第34回木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志を主人公にした作品で、同作と、東日本大震災の被災地で写真洗浄のボランティア活動に励む人々を撮影した写真集『アルバムのチカラ』の2冊が原案となっています。

監督は商業映画デビューの『湯を沸かすほどの熱い愛』で第40回日本アカデミー賞をはじめ様々な国内外の映画賞を席巻した中野量太。出演は、二宮和也妻夫木聡、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満と主役級の豪華俳優陣が集結しています。

 

原案となった『浅田家』は普通の家族が消防士やバンドマン、レーサー、極道、ラーメン屋等に全力でなりきった姿を収めた写真集で、僕も出版当時(受賞時なのかな?)本屋で平積みになっているところをよく見ていました。

中野監督は昔から「家族の絆」を描くのが得意な監督なので、豪華俳優陣たちを使ってそんな【普通じゃない】家族をどう描いたのかが注目ポイントです。

それではいってみましょー♪

 

映画「浅田家!」予告【2020年10月2日(金)公開】

映画『浅田家』の公式HPはこちら

 

あらすじ

 

 
幼いころ、写真好きの父からカメラを譲ってもらった政志(二宮和也)は、昔から写真を撮るのが大好きだった。そんな彼が、家族全員を巻き込んで、消防士、レーサー、ヒーロー、大食い選手権……。それぞれが“なりたかった職業”“やってみたかったこと”をテーマにコスプレし、その姿を撮影したユニークすぎる《家族写真》が、なんと写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞! 受賞をきっかけに日本中の家族から撮影依頼を受け、写真家としてようやく軌道に乗り始めたとき、東日本大震災が起こる―― 。
かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった被災地で、政志が目にしたのは、家族や家を失った人々の姿だった。

「家族ってなんだろう?」
「写真家の自分にできることは何だろう?」

シャッターを切ることができず、自問自答をくり返す政志だったが、ある時、津波で泥だらけになった写真を一枚一枚洗って、家族の元に返すボランティア活動に励む人々と出会う。彼らと共に《写真洗浄》を続け、そこで写真を見つけ嬉しそうに帰っていく人々の笑顔に触れることで、次第に《写真の持つチカラ》を信じられるようになる。そんな時、一人の少女が現れる。

「私も家族写真を撮って欲しい!」
それは、津波で父親を失った少女の願いだった―― 。

                                  映画『浅田家』公式HPより

 

スタッフ

 

監督中野量太
脚本中野量太 菅野友恵
原案浅田政志 『浅田家』
『アルバムのチカラ』
製作小川真司(企画・プロデュース)
若林雄介
 製作総指揮 山内章弘 臼井央
音楽渡邊崇
撮影山崎裕典
編集上野聡一
制作会社東宝映画 ブリッジヘッド
パイプライン
製作会社「浅田家!」製作委員会
配給東宝

 

キャスト

 

浅田政志二宮和也(少年時代:岩田龍門)
川上若菜黒木華
小野陽介菅田将暉
浅田順子風吹ジュン
浅田章平田満
外川美智子渡辺真起子
渋川謙三北村有起哉
浅田和子野波麻帆
浅田幸宏妻夫木聡(少年時代:中川翼)

 

感想(ネタバレあり)

 

総評

 
自主映画時代から「家族」と「死」を題材に作品を作り続けてきた映画監督・中野量太が、家族写真を撮り続けてきた写真家・浅田政志を描いた作品。

二宮和也をはじめ役者陣が素晴らしいので安心して観れたが、クライマックスに盛り上がりが欠けるので思いのほか突き抜ける感じは無かった。それでも、家族の有難みや家族写真の尊さは十分伝わってきたし、良質な作品であることは間違いない。躊躇せず多くの人に薦められる一本。
 

 

……という訳でさっそくレビューを始めていきたいと思います。

まず、はじめに監督について。

本作を撮った中野量太監督は京都出身の映画監督で現在47歳。
日本映画学校時代の卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤。』から既に注目されており、映画・ドラマの助監督を経て6年ぶりに監督した『ロケットパンチを君に!』、初の長編監督作となった『チチを撮りに』、商業映画デビューとなった『湯を沸かすほどの熱い愛』など、映画を撮ればほぼ間違いなく何かしらの映画賞を受賞する(しかも複数個)実力派の映画監督です。

そして、中野監督作品に共通しているのが「家族と死」を扱っていること。
しかも、暗くて陰鬱な作風というよりかは、明るくて優しい映画を撮る印象があるので、『一風変わった家族』と『東日本大震災』を扱った本作は中野作品に最も相応しい題材と言えます。

二宮和也が主演することになった背景

 

そして、そんな中野監督と主演の二宮和也にはある因縁があります。

今から約3年半前。2017年の3月に行われた第40回日本アカデミー賞の授賞式で、最優秀主演女優賞に『リップヴァンウィンクルの花嫁』から黒木華が、中野監督の商業映画デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』から宮沢りえがノミネートしていました。

その際、受賞者を発表するプレゼンターを二宮和也が務めていたのですが、彼は黒木華が呼ばれた時に言い間違えないよう『リップヴァンウィンクル』という難しい単語を舞台裏でずっと練習していたそうです。

しかし、結果的に受賞したのは、宮沢りえ

そのことに気が抜けたのか、二宮和也はなんと発表時に『湯を沸かすほどの熱い愛』『湯を沸かすほどの熱い“夏”』と言い間違えてしまうという大ミスをやらかしてしまいます。そして、そのことに対して大変申し訳なくなった二宮和也は、わざわざ授賞式後に中野監督にお詫びの手紙を書いたのですが、その返事の中に「全然気にしていない」ことに加え、「よかったら僕の映画に出てください」という文言があったそうです。

それからというもの、二宮和也はジャニーズ事務所に「中野監督からオファーが来たら絶対に受けるから」と宣言し、今回の『浅田家!』に繋がったとされています。

 

綿密に練られた脚本について

 

ここからが感想です。

僕が本作を観てまず感心したのが「綺麗に整理されている脚本」でした。

本作『浅田家』は写真家・浅田政志による2冊の写真集を原案にしているので、大きく分けて2つのパートに分かれています。前半が浅田家の家族写真を撮るパートで、後半が東日本大震災の被災地で写真洗浄のボランティアをするパートです。そして、その2つを違和感なく繋げるために「依頼された家族写真を全国各地に撮りに行く」パートが間に差し込まれ、冒頭とラストを現在(ある仕掛け)で挟むという構成でした。

前半で「家族がなりたかったもの」を撮りながら写真と向き合い、後半で「家族を失った人々と出会いながら家族写真の意味を見つめ直すさま」が描かれ、政志が写真を撮り続ける理由をどう結論付けるかが最終的な着地点になるわけです。

 

しかし、浅田家はかなり個性豊かなキャラクターが揃っているので、写真集『浅田家』のみでも1本の映画は作れたはず。コスプレ家族写真を撮って、写真集が売れて、全国に家族写真を撮りに行って、最終的に黒木華と結ばれればいいわけですし、中野監督の力量であればそれはそれでハートウォーミングな映画になっていたと思います。

 

それでも、本作に被災地で撮られた写真集『アルバムのチカラ』の要素を入れてきたのは、前述した通り、中野監督がこれまで「家族」とともに「死」も描いて来た映画作家だからです。インタビュー記事を読むと、東日本大震災を描いた映画を作ることはクリエイターの責務だと考えていたようですし、浅田家という面白い家族を通せば「自分のスタイルで震災を描ける」と踏んだのでしょう。

 

しかし、テイストの違う2つの写真集を扱うとなると、大きなリスクが生じてしまいます。それは、脚本がしっかりしてないと前半と後半で違う映画に見えてしまうことです。ただでさえ、異なる事情を持った複数の家族が出てきてエピソードがぶつ切りになりがちなのに、浅田家パートと被災地パートはテイストが180度違うので、ちゃんと1本の作品として成立させるのはかなり難しいわけです。

そこで、脚本を担当した中野監督菅野友恵はエピソードの置き所を細かく計算しながらプロットを構築し、浅田家の出番がなくなる後半に『父の誕生日』や『病気で倒れる』エピソードを織り交ぜたり、帰省した先で写真家としての矜持を発見したりして、上手く前後に繋がりを持たせていました。

この題材の映画を観客に違和感なく観せるのってかなり技術のいることだと思います。

 

ただ、1つ残念だったところを言うと、せっかく分かりやすい構成にしているのにナレーションや台詞が説明過多だったりしたので、もうちょっと観客を信じて不必要な部分を省略しても良かったんじゃないかなとも思いました。この辺りは、普段あまり劇場に来ない二宮君ファンをターゲットにしているから仕方のないことなのかもしれませんけどね。

 

とにかく俳優が実力派揃い

 

「浅田家!」製作委員会

 

本作は何と言っても出演する俳優が豪華です。
まず、二宮和也、妻夫木聡、平田満、風吹ジュンを浅田家にキャスティングした時点で『浅田家パート』は勝ちが確定したと言っても過言ではありませんし、仮に脚本や演出がメチャクチャでもこの俳優陣ならそれなりのクオリティに仕上げることが出来たはず。そう思えるぐらい実力派が揃っていました。

しかも、政志の恋人役に黒木華、被災地で知り合うボランティアに菅田将暉渡辺真起子、震災で娘を亡くした父親役に北村有起哉と、どこのシーンを観ても上手い役者が出てくるので、物語に引き込む力が強く、推進力をキープしたまま安心して最後まで観ることが出来ました(子役はちょっと気になったけど)。

 

一人ずつ良かった点を挙げてくと物凄い文量になってしまうので、簡単に触れるだけにしますが、まず主演の二宮和也は抜群の安定感でした。さすがイーストウッドから演出を受けている俳優です。どちらかと言うと、彼は場の空気に溶け込むのが上手い俳優だと思うのですが、同じ人物を演じながらも場面場面で違った表情を見せていて、涙のパターンすら使い分けていました。また、どれだけ周りの人間に迷惑を掛けようが憎めない飄々さを持ち合わせているので、観ていて全然嫌な気分になりません。2020年で嵐は一旦活動を休止してしまうようですが、彼に関しては出演オファーが途切れることはなさそうですね。現状、ジャニーズ事務所で一番演技が上手いのは彼だと思います。

次に、被災地で政志と知り合うボランティア青年・小野陽介を演じた菅田将暉です。出番は後半からでしたが、彼の演技もかなり良かったです。片っ端から邦画を観ていると必然的に彼の出演作に当たる機会が多く、最近だと『糸』を劇場で観ているんですが、観る度に全然違う印象を抱きますし、今回もオーラを消しつつ素朴なボランティア青年を完璧に演じていました。二宮和也同様に今回は泣きの演技にやられました。

 

 

続いては、政志の幼馴染・川上若菜を演じた黒木華。彼女もプロのカメラマンを目指し上京した政志を献身的に支える女性を好演してました。特に、東京の家に転がり込んできた政志を優しく受け入れたシーンや、写真集を買い込んで夜な夜なページを捲っているシーン、堤防で結婚を迫るシーンなど、黒木華の登場するシーンはどれも印象に残っています。今年30歳になった彼女ですが、僕は同世代の中では頭一つ抜けてるぐらい天才的な演技力を持っていると思っているので、これからも注目していきたいと思います。

 

他にも、妻夫木聡は浅田家が円滑に廻るよう一歩引いた行動に徹するお兄ちゃんを丁寧に演じていたし、中野監督の過去作『チチを撮りに』から渡辺真起子が、『長いお別れ』から北村有起哉が引き続き出演するなど、勝手の分かった俳優たちも浅田政志の物語に花を添えている印象がありました。

やっぱり実力のある監督のもとには、実力のある俳優が自然と集まってくるんですね。

 

実は浅田政志が一番面白い

 

これは映画から離れちゃいますけど、写真家・浅田政志について。

この映画を観るまで……いや、このブログを書き始めるまで、僕は失礼ながら浅田政志という人物がどれほどの写真家か知らないでいました。

勿論、木村伊兵衛写真賞を受賞したあたりから本屋で写真集『浅田家』を見掛ける機会はありましたけど、他の作品は見たことがなかったし、申し訳ないのですが、「写真界の一発屋的な人なのかな」とか思ってたんです。

でも、調べてみたらメッチャ面白い。
しかも、写真家として結構すごいキャリアを歩んでる。

例えば、週刊誌の『AERA』や月刊誌の『SWITCH』で写真を撮っていたり、コブクロのアーティスト写真や、BIGLOBE、雪印メグミルク、東京ガスなどの広告(スチール)を手掛けていたりします。また、家族写真や被災地の写真、浅田家の写真などで多くの写真展、ワークショップを開催するなど、全国各地を飛び回って活動しているようです。

そして、彼の撮る写真が凄く良いんです。
温かみがあるというか、幸せに溢れているというか……。

とにかく、officialサイトにいくと、浅田政志の作品や活動内容が掲載されているので、ご興味のある方は是非ご覧ください。きっと彼の活動を知ることで映画の感動がより深まると思います。

浅田政志のofficialサイトはこちら

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。

とにかく脚本とキャストの演技力が凄い。
本作はその一言に尽きますね。

ただ、手放しに傑作と言い切れるかと問われると、そうとも言い切れない部分も結構あって、例えば、クライマックスが『少女の家族写真を撮る』という動きのない心情の幅で見せる静かなシーンだったので、若干盛り上がりには欠けいたし、明らかに泣かせにきてるシーンもあるので、その辺りに拒絶反応を示してしまう人もいるかもしれません。

それでも作っているのが中野監督なので、間違いなく平均以上の水準はキープしていますし、老若男女にオススメできる素晴らしい一本となっていました。

 

間もなく東日本大震災が起きてから10年になるということで、近年はまた震災を扱った映画が増えてきていますが、その中でも本作は被災地描写をかなり誠実に真摯な姿勢で撮っている印象を受けました。悲しいシーンもありますが、基本的には温かくて優しさに溢れている映画なので、興味があれば、是非劇場でご覧ください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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