映画『糸』感想 中島みゆきの名曲を菅田将暉と小松菜奈によって映画化!果たしてその出来は……?【ネタバレあり】

映画レビュー
(C)映画『糸』製作委員会

今回取り上げるのは、菅田将暉小松菜奈が主演を務める話題作『糸』

1998年にリリースされた中島みゆき往年のヒット曲「糸」から着想を得たオリジナルストーリーで、『64-ロクヨン-』『8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら』『菊とギロチン』瀬々敬久が監督をした作品です。

 

た~ての糸はあ~なた~♪
よ~この糸はわ~たし~♪
のサビで有名なあの曲ですね。

 

本作は、当初4月24日に公開される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8月21日に公開が延期。しかし、どういう訳か全国公開に先駆けて8月12日(水)に1日限定で全国350館で特別先行上映が行われています。

また、『コンフィデンスマンJP』もビックリのオールスターキャストに加え、3月には一部スポーツ誌で主演の菅田将暉小松菜奈の熱愛も報じられたことにより世間からの注目も非常に高い作品です。

果たして映画『糸』は楽曲のように10年後、20年後も愛される作品となったのか……。

それではいってみましょー♪

 

菅田将暉&小松菜奈 映画『糸』MUSIC VIDEO( 中島みゆき「糸」フル )【8月21日(金)公開】

映画『糸』の公式サイトはこちら

 

あらすじ

 

平成元年生まれの高橋漣と園田葵。
北海道で育った二人は13歳の時に出会い、初めての恋をする。
そんなある日、葵が突然姿を消した。
養父からの虐待に耐えかねて、町から逃げ出したのだった。
真相を知った漣は、必死の思いで葵を探し出し、駆け落ちを決行する。
しかし幼い二人の逃避行は行く当てもなく、すぐに警察に保護されてしまう。
その後、葵は、母親に連れられて北海道から移ることになった。
漣は葵を見送ることすらできないまま、二人は遠く引き離された…。
それから8年後。地元のチーズ工房で働いていた漣は、友人の結婚式に訪れた東京で、葵との再会を果たす。
北海道で生きていくことを決意した漣と、世界中を飛び回って自分を試したい葵。
もうすでに二人は、それぞれ別の人生を歩み始めていたのだった。
そして10年後、平成最後の年となる2019年。
運命は、もう一度だけ、二人をめぐり逢わせようとしていた…

                                        映画『糸』公式サイトより引用

 

スタッフ

 

監督瀬々敬久
脚本林民夫
原案中島みゆき『糸』 平野隆 
製作平野隆(企画プロデュース)
音楽亀田誠治
撮影斉藤幸一
制作会社ファインエンターテイメント ツインズジャパン 
製作会社映画『糸』製作委員会
配給東宝

 

キャスト

 

高橋漣菅田将暉(少年期 – 南出凌嘉)
園田葵小松菜奈(少女期 – 植原星空)
高木玲子山本美月
冴島亮太高杉真宙
後藤弓馬場ふみか
村田節子倍賞美津子
桐野昭三永島敏行
矢野清竹原ピストル
山田利子二階堂ふみ(友情出演)
 富田幸太郎 松重豊
桐野春子田中美佐子
園田真由美山口紗弥加
竹原直樹成田凌
水島大介斎藤工
桐野香榮倉奈々

 

感想(ネタバレあり)

 

総評


中学生時代までは良かった。
あと、友情出演の二階堂ふみが素晴らしかった。

でも、大人パートになってからはツギハギだらけのパッチワーク映画。
平成~令和の約30年を130分で描いているため展開がどれも唐突だし、物語を成立させるためだけに出てくる記号的なキャラクターが多過ぎる。
せっかくの音楽をモチーフにした作品なのに曲の使い方もイマイチ効果的じゃない。

どうしてこの内容で前後編に分けなかったんだろう。
キャスト目当ての人にしかオススメできない。

 

……はい。すみません。
ぶっちゃけ本作『糸』に関してポジティブな意見はほとんどありません。
全然ダメでした。

なので、この作品が大好きな方、涙腺が崩壊したという方がこのブログを読んだら不快な思いにさせてしまう可能性があります。
読み進めていただける場合はくれぐれもご注意ください。

 

 

 

では、本題に入る前に名曲・ヒット曲を元に作られた映画について簡単に解説します。

 

1950~60年代。歌謡曲全盛期だった日本では、ヒット曲を映画化した「青春歌謡映画」というものが流行っていました。

今で言うメディアミックス的なものだと思いますが、かつて美空ひばりとか坂本九とか石原裕次郎といったスターたちのヒット曲が次々と映画化されていった時代があったわけです。

詳しく知りたい方は「青春歌謡映画」でググってみると、映画化された曲の一覧や「青春歌謡映画傑作選DVD〇〇巻セット」とかが普通に出てくると思います。

 

そして、その流れは脈々と受け継がれ、平成に入ってからもそういった作品はコンスタントに作られています。例えば、代表的な作品はこんな感じです。

 

森山良子/夏川りみ『涙そうそう』
(出演:妻夫木聡、長澤まさみ)
一青窈『ハナミズキ』

(出演:新垣結衣、生田斗真)
GReeeeN『キセキ-あの日のソビト』

(出演:松坂桃李、菅田将暉)
MONGOL800『小さな恋の歌』

(出演:佐野勇斗、森永悠希)
中島美嘉『雪の華』

(出演:登坂広臣、中条あやみ)

 
どれも大ヒットを記録した名曲ばかりですよね。
「一曲も知らないよ」という方はほとんどいないんじゃないでしょうか。

 

では、なぜ今もここまで名曲をモチーフにした映画が作られるかと言うと、

・その曲が好きな人・思い入れのある人が映画館に足を運ぶキッカケになる
・観客が曲を聴いていた頃の自分と作品をリンクさせやすい(感情移入しやすい)
・宣伝がしやすい/作品のテーマやイメージを伝えやすい

・一番盛り上がるところでエモさ100%の名曲を使える
・故に企画が通りやすい

という理由がほとんど。

要するに、漫画や小説などの原作ものの映画と同じで、企画する側の人たちは「曲の人気にあやかって映画もヒットする可能性が高い」と考えているわけです(実際、『涙そうそう』の興行収入は31億円、『ハナミズキ』は28億円を超えてヒットしてます)。

 

で、今回の『糸』について。

あくまでも僕の予想ですが、映画『糸』も、曲の力、キャストの人気、宣伝効果が相まってかなりの確率でヒットはすると思います。少なくとも大ゴケはしないでしょう。

上映中にすすり泣く声もチラホラ聞こえてきたので、口コミでも広がるかもしれません。

 

でも、じゃあ完成度の高い作品かと言われれば、そうでもない。

なので、今回は僕がこの作品がダメだったと思う理由を大きく分けて3つのパートに分けて書いていきたいと思います。

 

130分で約30年を駆け抜けるのは難しいでしょ問題

 

本作『糸』は平成元年生まれの2人が駆け抜けた約30年を描いた物語です。

そして、曲の歌詞にも、

どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語

とあるように、離れ離れになった漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈のふたつの人生が並行して進み、要所要所でそれが交差する模様を描いていきます。

 

しかし、130分の映画に30年の平成史を収めるのは相当ハードルが高く、案の定、本作もエピソードが飛び飛びになっている印象が拭えませんでした

 

今年の3月にも、本作によく似た『弥生、三月-君を愛した30年-』遊川和彦監督)という映画が公開されていて、この作品を観た時も同じことを思ったんですが、長い年月を描いた映画ってどうしても連続ドラマのダイジェスト版みたいになっちゃうんですよね。

 

しかも、離れた場所で暮らすの人生に加えて、主役を張れる豪華キャストにはそれなりに見せ場を作らないといけないし、物語の舞台は北海道・東京・沖縄・シンガポールなど多岐に亘る。そこに9.11やリーマンショック、東日本大震災などの史実を盛り込んでいくわけです(それでも、北海道全域がブラックアウトした北海道胆振東部地震には触れないっていうね……)。

 

例えば、ファンドマネージャー・水島役の斎藤工が登場するのってだいたい20~30分ぐらいで、登場したのも10シーンあるかないかだったと思うんですが(完全に肌感覚。違ったらごめんなさい)、その中でなんと2回も失踪しています。

リーマンショックで会社が傾いて東京から姿を晦ましたと思ったら、次のシーンでは「ここにいると思った」とか言って沖縄でに発見され、数分後には謎の大金だけ残してまた失踪。

 

そもそも沖縄まで行く必要があったのかは疑問が残りますが(北海道と沖縄で『遠い空の下』ってことなのかな?)、とにかくもっと丁寧に水島との関係を掘り下げないと、のキャラクターに深みが出ないと思いました。

 

どういうことかと言うと、本作の中で葵が自らの意思で選んだ(信じた)相手は水島、玲子(山本美月)、そしての3人だけなわけですが、そのうち水島は失踪、玲子にはまんまと裏切られているわけで、客観的に見たら葵のキャラクターって『頑張り屋だけど、全く人を見る目がない子』となってしまいます。

 

だから、それを回避するためには要点だけを切り取ったダイジェストではなく、もっと尺を使って出会いから別れまでをちゃんと描き、でも「水島は運命の相手じゃなかった」と結論付けて先へ進まなければならなかったんじゃないでしょうか。

ていうか、終盤で葵を迎えに来るのは冴島(高杉真宙)じゃなくて水島の方が効果的でしたよね。ギャラやらスケジュールの問題で難しかったのかもしれないけど……。

 

総評でも書きましたけど、このボリュームで2人の人生を描くのなら『僕等がいた』(三木孝浩監督)みたいに前後編に分けるべきだったと思います。

  

作り手たちにキャラクターへの愛情がない問題

 

次にキャラクター造形について。

個人的に、本作が抱える最大の欠点は、作り手たちに各キャラクターへの愛情がないことだと思っています。

何故なら、映画の本質である『人間』を描くことを放棄して、出来事を誘発するためだけに存在している『記号的な脇役』だらけだから。

 

例えばですよ?

この作品を『は運命の赤い糸で結ばれていた』ってところに着地させるなら、命を懸けて子どもを産んでくれた香(榮倉奈々)は、結局、漣にとって運命の人じゃなかったってことになるわけです(それを匂わす台詞もありましたけど)。

しかも、にとって人生で一番心が動く(ドラマがある)瞬間であるはずの出産や葬儀の直前直後を丸々カット。これって、「観客には泣きポイントとして見せたいけど、の存在感は極力なくしたい。だって彼女は運命の相手じゃないから」っていう意図があると思うんですけど、人間のドラマを描く上で全然誠実じゃないですよね。

 

それに、娘を亡くした桐野昭三(永島敏行)がドングリを投げてを追い出したのだって、のちにのもとへ行っても観客の心象が悪くならないために言わせてる台詞であって、あの夫婦であればシングルファザーとなったや孫のことを全力でサポートしてくれたはず。

話が前後しますが、が病院に元彼を呼んだのもそう。最終的にと結ばれても観客の心象が悪くならないように掛けた保険でしかありません。

 

本作が好きな人は認めたくないでしょうが、の娘だって、泣いてる人を抱きしめる(で、観客を泣かせる)のと、最後にドングリを投げる役割が与えられた『脇役』なんです。

その証拠に、クライマックスでは完全にその存在が消え去ります。

確かに、チーズ工房で松重豊に「娘を頼んだ」的なことは言ってますけど、夕方から日付が変わる深夜24時まで幼い娘を放ったらかすなんて、親のすることじゃないでしょう。

ましてやお母さんが死んで普段から寂しい想いをしているだろうに……。

結局、って本来一番大切にしなきゃいけない、何だったら自分の命や人生よりも大切なはずのまだ幼い娘を『自分の欲のために』平気で雑に扱うんですよね。

 

しかもそこに『人を見る目がない葵』のキャラクター問題が重なってくるもんだから、最終的に葵は「と結ばれて幸せなの?大丈夫なの?また傷つかない?」と思ってしまいます。

 

全ての原因は、作り手たちにキャラクターへの愛情がないから。

こうしたキャラクター設定の一つ一つがノイズとなって、綺麗なハッピーエンドとして終われないことは非常に残念だと思いました。

 

③曲の解釈はそれでいいの?問題

 

最後に曲の解釈について。

繰り返しになりますが、本作は中島みゆきの名曲「糸」をモチーフに作られた作品です。

確かに映画を観た後で改めて「糸」の歌詞を読むと、「ああ、この歌詞はあのシーンのことを言ってるんだな」と分かりますし、大部分はリンクしています。

織りなす布が暖めうるのは娘なんでしょう、きっと。

 

でも、中島みゆきが曲に込めた想いって本当にそういうことなんでしょうか?

 

僕には中島みゆきが「糸」を『恋愛の歌』として作ったのか、もっと広義的な『人と人の歌』として作ったのかは分かりませんけど、少なくともこの作品って「糸」を『漣と葵の運命の赤い糸』だけに限定していて、『他者との縁』や『他者の仕合わせ(幸せ)』を完全に無視しています

 

「糸」をモチーフに作られた映画で、あれだけ大勢のキャストが出てるのに「この人たちも運命の相手同士なんだなぁ」とか、「年齢や性別を超えた仲間って素敵だなぁ」みたいな関係性が一切見えてこないのって問題じゃないですか?

 

しかも、にいたっては人との繋がり・関係性を全てぶった切りながら生きてますからね。

まあ、主演2人以外は役割を担うだけの存在なので、そうなることは必然なわけですが、曲の解釈をもっと広げて、全員が困難を乗り越えてハッピーになれる終わり方の方を模索してくれた方が、観客はもっと感動出来たと思います。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。

ここまで言ってしまうと、「そんなの揚げ足取りだ」とか「私は感動したのに最低」とか言われそうですが、あくまでも個人的な感想なので勘弁してください。

 

勿論、この作品にも良いところはあって、中学時代の2人(南出凌嘉植原星空)はフレッシュで良かったし、二階堂ふみも登場は2シーンだけでしたけど、一切手を抜かずフルスロットルで演じていたので「やっぱり良い女優さんだなぁ」と再認識しました。

あと、既視感は凄かったですけど、病で憔悴していく榮倉奈々の演技も良かったですね。

小松菜奈も安定の可愛さでしたし。

 

ということで、役者陣の演技に関してはそこまで文句は無く、脚本と演出、それと今回はあえて言及はしませんでしたけど、音楽の使い方や編集あたりがあまり好きになれなかった感じです。

でも、最初に言いましたけど、劇場内からはすすり泣く声が結構聞こえてきたので、刺さる人には確実に刺さる一本になってると思います。

是非、そこら辺を確かめる意味でも劇場に行って鑑賞してみてください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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