今回扱うのは監督ブラディ・コーベット×主演ナタリー・ポートマン×音楽シーアの『ポップスター』。
こちらの作品も本来は4月3日に公開される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で6月5日に公開延期となっていた作品です。
タイトル通りナタリー・ポートマンが “若くして富と名声を手に入れた” ポップスター(歌手)を演じ、その成長や苦悩、葛藤を描くといった内容でした。
監督を務めたブラディ・コーベットのことは今回初めて知ったのですが(勉強不足ですみません)、マネージャー役にジュード・ロウ、ナレーションにウィレム・デフォーと豪華俳優陣が名を連ねており、ナタリー・ポートマンとジュード・ロウに関しては製作総指揮としても本作に携わっているようです。
ただ、正直言ってあまり本作にはあまり好意的な感想を持てず、今回は辛辣なレビューになっていますので、この作品が好きな方はここで読むのを止めていただいた方がいいと思います(せっかく来ていただいたのにスミマセン)。
それでは、いってみましょー♪
映画『ポップスター』の公式HPはこちら
あらすじ
時は2000年、アメリカに暮らすセレステ(ラフィー・キャシディ)は、14歳にして人生の劇的な変化に直面する。 同級生による銃乱射事件に巻き込まれ、生死の境をさまよった果てに蘇ったのだ。さらに、姉のエリー(ステイシー・マーティン)と作った犠牲者への追悼曲が国民的大ヒットを記録、敏腕マネージャー(ジュード・ロウ)と契約して発売したアルバムも注目される。エリーに見守られながら、 ヨーロッパでのレコーディング、 LAでのMV撮影など、 スターへの階段を一気に上っていくセレステ。そんな中、 エリーとマネージャーが男女の関係になり、セレステは姉に裏切られたと感じ、大きなショックを受ける。その日以来、姉妹の心は決裂し、セレステの純粋無垢な少女時代も終わりを告げるのだった。
時は2017年、31歳になったセレステ(ナタリー・ポートマン)は、一度は頂点を極めたスターダムから転落していた。何かと世間を騒がせる言動に走り、スキャンダルで炎上し、アルコールに溺れていたのだ。だが、歌への情熱だけは失くしていない。何とか復活を遂げようと、1年間をかけて自身の集大成かつ最高となるツアーを企画。ところが、 その初日を前にして思わぬニュースが入る。クロアチアのビーチで銃乱射事件が起こり、犯人全員がセレステの大ヒット曲 「ホログラム」のVで使ったシルバーのマスクを着用していたというのだ。
バッシングを避けるために、記者会見を開くことになるが、事件のトラウマが押し寄せナーバスになるセレステ。そこへ、娘のアルビー(ラフィー・キャシディ※少女時代のセレステと二役)が、子育てを任せてきたエリーに連れられて訪ねてくる。セレステは、ストレスをエリーにぶつけ、些細なことで姉を属倒する。 傷ついたエリーは、涙ながらに「今度、私を脅したら、子育ても曲作りも私がしたって暴露する」と訴えるが、セレステは「何を暴いても誰も気にしない時代よ」と平然と言いのけるのだった。
記者会見の席で、何度か危ない発言に流れそうになるが、何とかマネージャーが用意した無難な声明を暗唱するセレステ。だが、個別の取材で、今回のツアーは、 数年前に危険運転で相手に重傷を負わせて逮捕されたことからの復活かと問われ、我を失ってしまう。コンサート会場に到着すると、緊張と恐怖、メディアへの怒りなど様々な感情が爆発してパニックを起こすセレステ。 だが、遂にショーが幕を開けると、満員の観客はもちろん、セレステに人生を奪われたエリーさえも興奮と歓喜に包まれる圧倒的なパフォーマンスが始まる一。
『ポップスター』公式HPより引用
スタッフ
監督・脚本 | ブラディ・コーベット |
原案 | ブラディ・コーベット モナ・ファストヴォールド |
製作 | ミシェル・リトヴァク デヴィッド・リトヴァグ |
ダヴィド・イノホサ D・J・グッゲンハイム | |
アンドリュー・ローレン ブライアン・ヤング ほか | |
製作総指揮 | ナタリー・ポートマン マーク・ギレスピー |
ロン・カーティス ジュード・ロウ | |
スヴェトラーナ・メトキナ シーア | |
音楽 | シーア スコット・ウォーカー |
撮影 | ロル・クロウリー |
編集 | マシュー・ハンナム |
製作会社 | キラー・フィルムズ スリー・シックス・ゼロ |
アンドリュー・ローレン・プロダクションズ | |
ボールド・フィルムズ | |
配給 | (米)ネオン (日)ギャガ |
キャスト
セレステ・モンゴメリー | ナタリー・ポートマン |
10代のセレステ/アルベルティーネ | ラフィー・キャシディ |
セレステのプロデューサー(マネージャー) | ジュード・ロウ |
エレノア・モンゴメリー | ステイシー・マーティン |
ナレーション | ウィレム・デフォー |
感想(ネタバレあり)
【総評】
導入部はかなり攻めた作りで期待感が高まるも、残念ながらそこがピーク。
上手くやれば『アリー スター誕生』に並ぶ音楽映画になる可能性はあったのに、重要なことは全部ナレーションで説明しちゃうし、既視感のある単調なカメラワークが続くしで、脚本と演出がことごとく観客のニーズ(観たいシーン)から離れていき、全身タイツで熱演するナタリー・ポートマンが可哀想になってくる始末。
終始グタグダで、残念ながら今年のワースト候補!!!
本当に良かった導入部。でも、そこから何故……??
まず、本作は3幕構成になっていて、その前にプロローグ(前兆パート)的なものが入っています。
前兆パートのメインはニューヨークの学校が舞台。
始業のチャイムが鳴り、先生が生徒たちと他愛も無い会話をしていると、スキンヘッドの不気味な生徒がやって来て、いきなり銃で先生を打ち殺してしまいます。
更に、犯人を説得しようとした主人公セレステも問答無用で首を撃ち抜かれ、学校中がパニックになっているのを余所に教室で銃乱射事件が勃発。
警察(特殊部隊?)が突入した時には生徒たちの無残な遺体が転がっているという状況でした(犯人も自殺しています)。
もうね、不謹慎ですけど、この時点でテンションが爆上がりなんですよ。
静と動の表現も良いし、常に緊張感が張り詰めていてグッド!
しかも、観た方はみんな驚いたと思うんですが、生徒たちを運ぶ救急車の長い列に被せてエンドロール(スタッフロール)が流れるんです。
まだ冒頭10分ぐらいなのに。
きっと監督は「主人公は一度ここで死んだ」or「バッドエンドのその先を描く」という意味で、このような演出をしたのだと思いますが、とにかくこの前兆パートは演出もカメラワークも素晴らしく、「何これ、超面白いじゃん!」と思って観てました。
……でも、そんな感動もここまで。これ以降は正直言ってカオスです。
まず、何とか一命を取りとめた主人公のセレステが銃乱射事件が起きたクラスで唯一の生き残りとなるわけですが、リハビリがひと段落したタイミングで教会(追悼式?)か何処かに呼ばれるんです。
「クラスメイトがどういう人たちだったか思い出を話して下さい」って。
きっと思い出話を聞きながら故人を偲び、二度とこのような惨劇が繰り返されないようみんなで祈りましょうみたいなことだったんだと思うんですよね。
でも、そんな周囲の期待を余所にセレステちゃんは予想の上をいきます。
「私、話すとかそういうの得意じゃないから代わりに歌を作って来たわ。
お姉ちゃん、ピアノ宜しく!!」
なんと、セレステちゃんは(恐らく)事件の遺族や関係者、メディアが大勢集まっているところに渾身のオリジナルソングをぶっ込んできたのです。
世界の歌姫になるにはこれぐらいのメンタルが必要ってことなんでしょう。
その堂々たる姿を前に「歌うんかーい!」などと突っ込む人間は一人もいません。
むしろ、セレステの目論み通り、参加者たちはその歌詞とメロディーと歌声に酔いしれ、会場全体に感動の嵐が渦巻きます。
えぇ、そうです。ポップスターの誕生です。
そして、この素晴らしい歌をメディアが放っておくはずもなく、またたく間に全米で一大ムーブメントを巻き起こしていきます。
しかも、まだ14~5歳のセレステちゃんは事件の被害者を使って金儲けしようと群がってきた倫理観のぶっ飛んだプロデューサーやレコード会社にハッキリと自分の意思を伝えながら対等に渡り合い、その輝かしいキャリアをスタートさせるのです。
そこからはもうヨーロッパでレコーディングしたりMV撮影をしたりで大忙し。
途中、ジュード・ロウ演じるマネージャー(役名が見付からない)とお姉ちゃんがデキてる瞬間を目撃して腹を立てつつも、少しずつスターダムへと駆け上がっていきます。
やっとナタリー・ポートマン登場。でも、熱演虚しく……
時は過ぎて2017年。
物語は一気に17年進み、セレステちゃんはセレステさんになってました。
しかも、セレステさん(ナタリー・ポートマン)の娘は、さっきまで子ども時代のセレステちゃんを演じていたラフィー・キャシディ。
(別に混乱はしませんけどね)
どうやらセレステは一度アーティストとして頂点を極めたのちにスキャンダルで失墜、アルコールやらお酒やらに溺れていたものの、今回のツアーで完全復活を遂げようと目論んでいるようです。
ただ、ブラディ・コーベットって監督は話の運びではなくルックを気にする人なのか、「それ相当重要じゃね?」ってことを全てウィレム・デフォーのナレーションで説明してくるという斬新な手法を取ってくるので注意が必要です。
だって「実は彼女、過去に洗剤用アルコールを飲んでしまい片目を失明しているのだ」とか終盤にサラリと言われますからね(※微妙に違うかも。うろ覚えです。ゴメンナサイ)。
だから、我々観客はとにかく苛立って悪態をつきまくるナタリー・ポートマンの演技を一瞬たりとも逃すことが出来ず、おのずと集中力が増すことになります。
しかも、コンサート直前にクロアチアのビーチで銃乱射事件が起こり、犯人全員がセレステの大ヒット曲 「ホログラム」のMVで使ったシルバーのマスクを着用していたということで記者会見をするハメに。
あぁ、なんて可哀想なセレステ。
上手く立ち回らないとセレステもバッシングされちゃうんですって。
そんなの完全にとばっちりなのにね……。
それでもまあ、会見は周りのサポートもあり何とか切り抜けるんですが、今度は個別の取材で『数年前に危険運転で相手に重傷を負わせて逮捕された』という過去を記者から突っ込まれて一気にナーバスモード。
結果、セレステは極度に取り乱し、クスリでラリったフラッフラの状態でスタッフに担がれライブ会場へと向かいます。
「もうダメだ、中止にしましょう!」
「こんな状態じゃステージに立てないわ!」
スタッフたちも不安そうな顔でいっぱいです。
そりゃそうですよね。立つのも覚束ないんですから。
でも、大丈夫。安心してください。
そこは百戦錬磨のポップスター。
show must go on!です。
気合でステージでは最高のパフォーマンスを見せますので!キリッ!
……という訳で、マネージャーとの一件(17年前にデキてたやつ)から横柄な態度を取り続けてきたお姉ちゃんに励まされて立ち上がったセレステは、全身タイツを身にまとってキレッキレ?の歌とダンスを渾身のドヤ顔で披露し、物語は幕を閉じるのでした。
めでたしめでたし。
まとめ
いかがだったでしょうか。
読んでいてよく分からなかったかと思いますが、正直言って僕も一度しか観ていないのでよく分かっていません(笑)
ただ、本作は色々なレビューサイトを覗いてみてもやっぱり評価は低いですし、日本語の公式ホーム―ページなんてあらすじを最後まで克明に載せてますから、配給会社も「こりゃマズイ」と思ってるんだと思います。
今作最大の問題は入口と出口が違うこと。
最初は「銃乱射事件の被害者」の物語として入っているのに、出口は「ポップスターの苦悩」になっちゃってるんです。
最初のテーマで通すならもっと銃社会を批判するようなメッセージを発するべきだし、ちゃんと被害者にしか分からないトラウマを描くべきです。
逆にポップスターの苦悩を描くならファンやメディアからの視点と彼女自身を対比しつつ、ナレーションで端折ったエピソードを入れていかなきゃダメ。
ようするに、要素を詰め込んだせいで収拾が付かなくなってるんですね。
まあ、若くしてスターになった主人公セレステを演じているのが、13歳の時に『レオン』(1995年/リュック・ベッソン監督)で大ブレイクしたナタリー・ポートマンなので、普通にスターの苦しみ・葛藤・トラウマ・世間とのギャップ等々を中心にポップカルチャーの裏側を描いていれば説得力のある作品になったのかもしれません。
唯一の見どころは、ナタリー・ポートマンの演技ですかね。
もともと好きな女優さんだったんですが、相変わらず熱演していました。
(ただ、制作総指揮はあんまり向いてないと思うよ)
という訳で、ナタリー・ポートマン好きな方のみにオススメです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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