『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』感想 現代版『若草物語』は脚色のお手本のような作品だ!【ネタバレあり】

映画レビュー
出典:映画.com

今回扱うのは、グレタ・ガーウィグ監督・脚本×シアーシャ・ローナン主演の話題作『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』

本来であれば、2020年3月27日に日本で公開される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で約2ヶ月半の公開延期となり、ようやく6月12日に全国公開されました。

今作は、監督と主演が2017年に公開され、世界中の批評家たちから高い評価を得た『レディ・バード』のコンビであることと、第92回アカデミー賞で(ノミネート6部門中)衣装デザイン賞を受賞していることから、日本で6月に公開される映画の中でも一番ビックタイトルです。

果たして、グレタ・ガーウィグは若草物語の世界をどう表現したのか……。

さっそくいってみましょー♪

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』6月12日(金)全国順次ロードショー

映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
公式ホームページはこちら

あらすじ

ジョーはマーチ家の個性豊かな四姉妹の次女。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかりながら、小説家を目指して執筆に励む日々。控えめで美しい姉メグを慕い、姉には女優の才能があると信じるが、メグが望むのは幸せな結婚だ。また心優しい妹ベスを我が子のように溺愛するも、彼女が立ち向かうのは、病という大きな壁。そしてジョーとケンカの絶えない妹エイミーは、彼女の信じる形で、家族の幸せを追い求めていた。

共に夢を追い、輝かしい少女時代を過ごした4人。そして大人になるにつれ向き合う現実は、時に厳しく、それぞれの物語を生み出していく。小説家になることが全てだったジョーが、幼馴染のローリーのプロポーズを断ることで、孤独の意味を知ったように─。自分らしく生きることを願う4人の選択と決意が描く、4つの物語。

                 映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』公式HPより引用

スタッフ

監督・脚本グレタ・ガーウィグ
原作ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』
製作エイミー・パスカル  アーノン・ミルチャン 
デニス・ディ・ノヴィ(英語版) ロビン・スウィコード
音楽アレクサンドル・デスプラ
撮影ヨリック・ル・ソー
編集ニック・ヒューイ
製作会社ニュー・リージェンシー・ピクチャーズ ディ・ノヴィ・ピクチャーズ
コロンビア映画 パスカル・ピクチャーズ ソニー・ピクチャーズ
配給コロンビア映画 ソニー・ピクチャーズ
                              

キャスト

medium.com
ジョー・マーチ(次女)シアーシャ・ローナン(『レディ・バード』)
エイミー・マーチ(四女)フローレンス・ピュー(『ミッド・サマー』)
メグ・マーチ(長女)エマ・ワトソン(『ハリー・ポッター』)
エリザベス・マーチ(ベス・三女)エリザ・スカンレン(ドラマ『KIZU 傷‐』)
セオドア・ローレンス(ローリー)ティモシー・シャラメ(『君の名前で僕を呼んで』)
マーチおばさんメリル・ストリープ(『クレイマー・クレイマー』)
ジョン・ブルックジェームズ・ノートン(ドラマ『マクマフィア』)
ミスター・ダッシュウッドトレイシー・レッツ(『8月の家族たち』)
ミセス・マーチローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)

 

感想(ネタバレあり)

それでは、感想です。

結論から言ってしまうと、
過去に何度も映像化されてきた『若草物語』をグレタ・ガーウィグが巧みに現代風にアップデートした素晴らしい作品だったと思います。

自分の好みを抜きにすれば、ほぼ文句のない一本。

150年以上昔の古典文学をいま映像化するなら絶対こうでしょ!っていう監督の強い拘りを感じましたし、脚本、演出、演技、美術、衣装どれを取っても一級品でした。

ただ、今作は2時間15分という上映時間の中に物凄い情報量が詰め込まれており、時間軸も行ったり来たりするので、原作を未読&『若草物語』関連の映画を初めて観る人は、メインどころの登場人物とストーリーは頭に入れておかないと混乱してしまうかもしれません。

超が付くほどの名作ですからね。
お前らもちろん知ってるよな?ってことなんでしょう。

 

という訳でまず初めに『若草物語』とは何ぞやというお話からしていきます。
※知ってる人は読み飛ばしてください。

 

『若草物語』について

『若草物語』(原題『Little women』)は、1868年にルイーザ・メイ・オルコットによって書かれた自伝小説で、150年以上経った今でも世界中で愛されるアメリカを代表する古典作品。

物語は、19世紀後半(南北戦争時代)のアメリカを舞台に決して裕福ではないマーチ家で暮らす四姉妹を、作家を目指す次女の視点から描いており、姉妹たちが移り行く時代の中で様々な経験をしながらそれぞれの生き方を模索していくストーリーです。

ちなみに、四姉妹のキャラクターはこんな感じ。

 

長女メグ
しっかり者。愛する人と結婚したい!

次女ジョー
活発。小説家になりたい!

三女ベス
病気がちだが優しい心の持ち主。ピアノが上手い。

四女エイミー
わがままだけど絵が上手い。金持ちになりたい!

 

そして、この『若草物語』は名作であるが故に擦られっぷりが半端なく、これまで何度も映画化、ドラマ化、アニメ化、漫画化、舞台化がされてきました。

中でも有名なのは1933年版(ジョー役・キャサリン・ヘプバーン)、1949年版(ジョー役・ジューン・アリソン)、1994年版(ジョー役・ウィノナ・ライダー)の映画3作品。

なので、『若草物語』について何の知識も無く、今作を観ようと思ってる方は、上記3作品のどれか1作品でも観ておくことをオススメします。

あんまりネタバレとか関係ない作品だし、その方が対比も出来ますしね。

 

ちなみに、この『若草物語』(原作)には続編があって、長女メグの結婚に始まりジョーの結婚に至るまでの『続 若草物語』、ジョーがベア教授と開いた「ベア学園」での様子を描いた『第三若草物語』、「ベア学園」が大学になって以降の『第四若草物語』が出ており、グレタ・ガーウィグ版の今作は1作目と2作目を交互に描いています。

 

監督グレタ・ガーウィグについて

映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』公式HPより

次に、本作の監督グレタ・ガーウィグについて。

グレタ・ガーウィグは1983年8月生まれの36歳。
カリフォルニア州サクラメント出身の女優・監督・脚本家です。

元々は劇作家志望だったようですが、2006年にジョー・スワンバーグ監督『LOL』にグレタ役で出演し、女優デビューを果たしました。

そこからマンブルコア映画運動へと参加し始め、主演したスワンバーグ監督の『ハンナだけど、生きていく!』(2007年)はカンヌ国際映画祭でも高い評価を得ています。

 

マンブルコア映画運動とは、低予算でアマチュア俳優を使い、台詞は現代口語的で明瞭に発音させず、使い若者の日常をそのまま描くといった内容が特徴のゼロ年代を代表する映画ムーブメントであり、つまるところその渦中で活躍をしていたグレタ・ガーウィグデジタル世代の若手映像作家を代表する存在だったわけです。

 

その後、ノア・バームバック監督(私生活でもパートナー)の『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(2010年)、『フランシス・ハ』(2012年)、『ミストレス・アメリカ』(2015年)に携わり、2017年には監督作『レディ・バード』を発表。

この作品でアカデミー賞史上デビュー作品としては初めて、そして女性監督としては史上5人目となる作品賞ノミネートを果たしました。

まだ30代と若いですし、このままいけばオスカーの作品賞や監督賞も十分獲れる逸材なので、今後の動向が大注目の映画監督です。

 

今作は現代版『若草物語』は脚色のお手本のような作品

そんなグレタ・ガーウィグ『若草物語』を扱った今作。

まず驚かされるのはオープニングです。

原作やこれまでの映画では「四姉妹で暮らしていた日々から大人になるまで」を時系列順に描いていましたが、グレタ・ガーウィグ版では大人になったジョーがニューヨークで出版社に小説を持ち込むところからスタートしました。

つまり、監督はこれまで映像化されてきた過去作とは一線を画し『続 若草物語』時代から『若草物語』を回想する(過去と現在を行き来する)構造を作りだしたのです。

 

この意味については後述しますが、とにかくこのオープニングシーンのポイントは、原作者のオルコットと主人公のジョーの姿が重なり合ってるのは勿論のこと(自伝小説ですからね)、そこに田舎からニューヨークへ出てきてキャリアをスタートさせたグレタ・ガーウィグ自身の姿も重ね合わせているところにあります。

しかも、その役を演じているのがグレタ・ガーウィグの自伝的映画でもある2017年の『レディ・バード』で主役を演じたシアーシャ・ローナン(ちなみにこの作品はNYに辿り着いたところでラストを迎えます)。

 

……もう初っ端から情報量が凄いです。
(どんだけ『若草物語』に思い入れがあんだよ、監督っ!)

 


それでも嫌な感じは全くなく、台詞や演技、衣装に構図とクオリティの高いカットの連続で、タイトルに入る前の時点から「あ、この映画は絶対面白い!」と確信しましたし、ジョーが男だらけのニューヨークの町を疾走する場面は映画史に残る名シーンになったんじゃないかと思います。

 

 

そして、そこからの展開は現在と過去が行ったり来たり。

どちらの時代も役者は同じなので、今がどの時代を描いているのかを正しく判断するには物語の大筋を知っていてもそれなりの集中力を要します。

(一応、衣装の雰囲気や演技は変えてるんですけどね。初見だと若干難解です)

 

ただ、この時間軸をクロスさせるのはちゃんと意味があって、監督が極限まで原作と向き合って導き出した答えなんだと思いました。

どういうことかと言うと、もともと『若草物語』は四姉妹一人一人にそれぞれエピソードがあるので2時間の映像作品に収めるのが難しく、全体的に散漫になりやすい(エピソードが飛び飛び・ブツ切りに感じる)というウィークポイントがあるんですね。

何を取って(+膨らませて)何を削るかが非常に難しいんです。
失敗すると「繋がってねーなぁ、ダイジェスト版かよ!」ってなってしまう。

しかし、時間軸を自在に操れることによって
①「ジョーの思い出」という表現にして散漫な印象を緩和
②「過去の言動と結果 」を並べることができ、因果関係を明確化
③複数のシークエンスを1つに纏めることができ、時間を短縮

これらのことが可能となりました。

 

例えば、過去作だとベスが「病気から復活するシークエンス」と「亡くなるシークエンス」は物語の前半と後半で別々に描かれていたのですが、今作は時間軸をいじれるルールを設定しているので、1つのシークエンスに纏めて(交互に見せて)います。

結果、ジョーとベスの関係性を深掘りすることができ、「復活」への希望や「死」への恐怖、シーンとしての盛り上がりを強調することに成功しています。

 

また、現在と過去を行き来することによって、フローレンス・ピュー演じる四女エイミーの葛藤や言動の動機が観客に伝わりやすくなっており、終盤のローリーとの結婚が唐突に見えないようにかなり工夫されていました。

我がままエイミーは役柄上「ただの嫌なヤツ」になる可能性が大で、彼女をどう見せるかってのも脚本家の腕の見せ所なわけなんですが、その点も監督なりにちゃんと考え、愛情をもって丁寧に描いてましたよね。
すんごくチャーミングでした。

 

そして、個人的に好きだったのは、主人公・ジョーがローリーと別れた後の一連の流れと【表現者としての衝動】をストレートに見せてくれたシーン。

何か欠落している部分(不満や不安、葛藤)がなければ芸術は生まれない!ってことを丁寧かつエモーショナルに表現していて思わず泣きそうになりました。

ベタっちゃベタなんですけどね。
ああいうシーンが大好きなんです。

ジョーが書いた小説のエンディングに関しても「編集者の言いなりになって! ちゃんと意志を貫けよ!」と思う方もいるでしょうが、『結婚する・しない』の両エピソードを見せることで原作へのリスペクトと監督の解釈を上手く折衷し、バランスよく描いていたと思います。

本当にね、こんな脚本書いて監督できる人ってそうそういませんよ。
それぐらい凄い作品です。

 

まとめ

舞台となった150年以上も昔のアメリカは男性優位な社会。

女性が働き、自立して生きていくことなんて考えられなかった時代です。

ましてや、劇中にも出てきますが、女性を中心に描いた作品なんてほとんどなく、頑張って書いたとしてもゴミ箱にポイです。

つまり、そんな時代に『若草物語』を書いた原作者のルイーザ・メイ・オルコットは攻めに攻めた存在だったのです。

 

そして、グレタ・ガーウィグもまた女性の映画監督がまだまだ少ない中、アメリカのインディーシーンからアカデミー賞まで上り詰めた人であり、この作品を通じて「周りの目なんて気にするな。幸せのカタチは人それぞれだ!自分の信念を貫き通せ!」と高らかに宣言をしています。

これだけでも、監督と原作者の感性が共鳴し合っているのが分かりますし、その信念が正当に引き継がれ、現代版『若草物語』として最高のカタチで公開されたことに映画ファンの一人としてとても嬉しく思います。

 

最高の演技、美術、そしてオスカーを受賞した衣装の揃った最高のアンサンブルは2時間15分一瞬たりとも目を離すことが出来ません。

グレタ・ガーウィグはいま最も才能が爆発している女性監督の一人で、そんな彼女の執念にも似た想いの詰まった今作は絶対に映画館で観るべき作品です。

きっと素晴らしい映画体験になると思うので、是非、予習をした上で劇場に足を運んでください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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